国内Web3で進む「海外流出」 コンテンツIP活用が勝敗を分ける

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国内でのWeb3事業の現状をふまえ、今後この領域が成長するためには何が必要なのか──。

これは、プレーヤーだけでなく行政の姿勢も大きく問われるテーマだ。今回は、Web3の事業調査や政策立案に携わる経済産業省コンテンツ産業課に所属する上田泰成氏に、各クリエイターがとりうる選択肢や、Web3マーケットで事業展開する企業の海外流出食い止めについて話を聞いた。


水野:上田さんの経済産業省内での担当分野とWeb3領域への関わりについて教えてください。

上田:経済産業省商務情報政策局コンテンツ産業課に所属しています。産業課ではゲーム産業、esports、バーチャルスポーツなどに関する業務を担当しています。Web3については、経産省だけではなく各省庁がそれぞれ管掌する分野でして、ユースケースの収集、知財保護、金融、インフラ整備などさまざまな調査や政策立案が行われています。

経済産業省 上田泰成氏

経産省としての一例を上げると、「Web3.0時代におけるクリエイターエコノミーの創出に係る調査事業」を実施しています。この事業は、実際にWeb3で、クリエイターエコノミーが成立するケースはどのようなものかを検証するもので、一般ユーザーを対象に、アバター二次創作コンテスト「経済産業省presents『メタバースファッションコンテスト』」を行いました。

このコンテストは、メタバースプラットフォーム「cluster」で行いました。複数のアクセサリ(一次創作物)を組み合わせコンテスト会場のテーマである「浮島」のイメージとあったアバターデザインを募集。40作品のエントリーがありました。

コンテストでの検証内容としては、「cluster」で出品された二次創作物の権利が誰に帰属するか、一般ユーザー(二次創作者)が二次創作物を利用できる範囲を誰が決定するか、一般ユーザーWeb3に参加する敷居をどう低くできるかなどです。

国内Web3企業の商機はIPにある

水野:Web3やメタバース関連領域では、コンテンツやその空間を生み出すクリエイターの存在が必要不可欠です。彼らの創作した権利の範囲や、どのように収益に結びつけていくかが、まだまだ定まっていないので、実証実験としては意義深いですね。

クリエイターの環境整備とともに、企業に対しては、ビジネス環境や税制整備も重要です。しかし日本では、これらの点で遅れをとり、2021年頃からは、日本のWeb3企業の「海外流出」も課題視されています。

Web3事業がもう1、2ステップ先に進んで社会実装されてくると、日本企業が海外に事業を輸出したり発信したりするメリットも見えてくるのではと思っているんですよね。

その点で、僕らが重要だと思っているのは、日本のコンテンツIP(知的財産)です。世界中のWeb3プラットフォームが日本のコンテンツIPを、“強い”、“貴重だ”と思っているのに、欧米のIPホルダーと比較して、日本のIPホルダーはなかなかWeb3への展開に「GOサイン」を出さない。これら日本のコンテンツIPと日本のWeb3企業がもっと結びついて事業化ができてくると良いのですが、いかがですか?
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文=水野和寛 編集=露原直人

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