働き方

2023.04.19

「一度味わったら、みんなこっちに来る」 クリエイター経済、急成長の理由

「一度味わったら、みんなこっちに来ると思いますよ」。会社員を辞めた人気クリエイターはそう語る。会社勤めでは味わえない「仕事のやりがい」を求めるクリエイター増加の背景とは?

「Forbes JAPAN」2023年5月号 では、「最高の働き方を探せ!」をテーマに、個人と組織の新しい働き方を大特集。パート1では、自分らしい働き方を実現するクリエイターに注目した。

オンラインで自分の作品やサービスを発信するクリエイターたち。彼らを中心とした、クリエイターエコノミーはいま、日本でも目覚ましい成長を見せている。昨年からVTuber事務所の大型上場が相次ぎ、株式市場をにぎわせたのも記憶に新しい。

昨年発足した、クリエイターエコノミー協会が発表した調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「国内クリエイターエコノミーに関する調査結果」)によると、国内のクリエイターエコノミーの市場規模は1兆3574億円。これは世界のクリエイターエコノミーの市場規模1042億ドルの約1割にあたる。

さらに、今後もクリエイターが増え、一人当たりの収入の増加傾向などが続けば、2034年には市場規模が10兆円を超えると調査で予測されている。

なぜクリエイターエコノミーが拡大しているのか。その要因は、副業解禁といった個人の働き方の変化や、オンラインコンテンツの消費時間が増えたという消費者側の変化、さらに、テクノロジーの進歩など、複合的な背景が絡み合う。

クリエイターエコノミーは10年以上前から使われていた言葉だが、その流れを加速したのは新型コロナウイルス禍だ。在宅勤務が多くの企業で導入され、自宅時間が増えた。さらに、死や病気を身近に考えるようになり、人々の意識を大きく変えた。仕事と人生についての優先順位が変わった人も少なくない。

「なんのために働くのか」「自分の人生の貴重な時間を使って、自分はどんな仕事をするのか」。そう問い直した先に、自分の好きなこと得意なことで収益を得る、クリエイターになるという選択肢を選びやすい環境が整ってきた。Web3.0のテクノロジーの普及や一般機器の性能向上で、質の高いコンテンツの制作や売買が個人レベルでもしやすくなった。

 「Forbes JAPAN」2022年9月号で取材した、クリエイターエコノミーの教祖と呼ばれる投資家でクリエイターのリー・ジンは、シリコンバレーでいち早く彼らに注目し、発信してきた。リー・ジンによれば、Web3.0の到来とともに、巨大テック企業による寡占が進んだプラットフォームとクリエイターのパワーバランスが変わってきたことが、新しいクリエイターエコノミーの成長につながっている。

新時代では、クリエイター側の力が拡大し、直接ファンと金銭を含めたやりとりも可能になり、複数のプラットフォームを使い分けるような有名クリエイターが現れている。史上最も稼ぐYouTuberミスタービーストのように、自身のブランドを立ち上げて、リアル店舗まで展開するビジネスに長けたクリエイターも出てきた。
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