Web3企業のユースケースを日本でも。始まっている「Web3立国」への道

渡辺創太 AstarNetworkファウンダー

2023年、世界はどのように変わっていくのか。Forbes JAPAN 2月号では、日本、そして世界で活躍するさまざまな業界のNo.1に「100の質問」を投げかけた。国際情勢、テクノロジー、ビジネス、金融などの分野で今年の変化予想を大公開。

金融やエンタメなど多方向へと広がり続けるWeb3業界で、日本発のパブリックブロックチェーン・Astar Network のファウンダーとして活躍する渡辺創太に話を聞いた。


Web2では、日本企業および日本という国がグローバルでまったくプレゼンスが出せず、アメリカ企業が独占しているような状態です。時代が新しくWeb3になるなかで、「国際的にこの領域をリードしていかなければいけない」「チャンスだ」と考えている人は多いのではと思います。

まずは、パブリックブロックチェーンでユースケースをつくりにいくこと。そして、欧米の後追いではなく日本発でWeb3についての世界的な議論を進めることが重要だと考えます。

日本政府によるWeb3国家戦略化や、自民党のNFTホワイトペーパーの第2弾起草の動きなど、Web3に対して真剣に取り組んでいただいていると感じています。ただ、会社保有トークンが法人税法上、期末時価評価の対象となること、トークンを利用した資金調達が大きく制限されていることなど、日本の税制や法律面の問題からWeb3起業家が海外へ流出しています。

世界で勝ちにいく起業家が増えるのはよいことですが、若者たちがシンガポールやドバイで起業している現状をみるに、日本政府が法律や税制を見直すことは急務でしょう。

これから私たちはNTTドコモとアクセンチュアと協働で、地方創生や環境問題のユースケースをつくる取り組みを始める予定です。また、国内事業者向けコンソーシアム「Astar Japan Lab」でも、福岡市や仙台市にも参画していただき、自治体の皆さんと日本のWeb3を前に進めていきます。

例えば、環境問題に関しては、カーボンクレジットをAstar Network上で発行して取引を進めること。地方創生では観光に注目し、NFTを用いて訪日した外国人が魅力的に感じてつい訪れてしまうようなトークンインセンティブをつくったり、ふるさと納税にNFTを使ったりする構想を練っています。

未来がどうなるかのは誰にもわからないですが、日本のWeb3が世界をリードできるポテンシャルは十分にあると思っています。暗号資産交換業大手のFTX Tradingが経営破綻し、Web3でのアメリカの勢いが弱まる予測もあります。一方で、日本は厳しい規制基準があったが故に大きな影響を受けていません。また、クリプトウィンター(暗号資産冬の時代)といわれるなかでも、日本だけは盛り上がりをみせています。

ここから数年で日本が徐々に規制緩和を行う方向にギアチェンジをして、世界に誇れるようなスタートアップやプロダクトが誕生していけば、経済発展につながる可能性は大きいと思います。Web3の領域はそもそもルールがなく曖昧なものです。我々Web3企業は実際に手を動かして実装しつつ、政府の方たちとも議論しながらインフラ・法律を整備していくことが重要だと思います。

わたなべ・そうた◎日本発のパブリックブロックチェーンAstarNetworkファウンダー。日本ブロックチェーン協会理事や丸井グループ、GMO Web3などのアドバイザーを務める。アジア版「Forbes 30 Under 30 2022」テクノロジー部門に選出。

文=堤 美佳子

この記事は 「Forbes JAPAN No.102 2023年2月号(2022/12/23発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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