「対立を解く」が鍵? 持続可能経営のための新しい人事の形とは

ラーニングエッジ代表取締役 清水康一朗

「共通のゴール」を設定し、「絆徳の人事」へ

経済産業省のデータによれば、人口統計上、生産年齢人口は、なんと2050年には3分の2に減少します。「なーんだ2050年か、まだ先だな」なんて考えないでください。いま「採用ができない」といっている会社は、毎年毎年、これからもっと採用しづらくなる状況になっていくのだ、ということですから。今のままでは圧倒的に採用しづらくなる未来が待っているのです。

となれば、いまの段階から、いかに優秀な人材を採用し、「定着」して「活躍」して頂くための仕組みをどう作めるかが極めて重要なテーマとなります。「採用」し、「教育」し、魅力的な組織とできるかどうかが、会社の明暗を左右するといっても過言ではないのです。そもそも、「対立」(コンフリクト)が起きている会社に、優秀な人財はいたくありません。もっと、有意義で、価値ある仕事に時間を使いたいと思うはずです。

そこで、最善の解決策としては、組織の「共通のゴール」を言語化し、共有することです。ミッション、ビジョン、パーパスと理解して頂いてもよいのですが、私のいう「共通のゴール」は、後ほどお話しするようなもっと身近な感覚です。社員と語り合って、上司と共に「共通のゴール」を作っていく文化を作ることです。

「共通のゴール」を共有することで、「絆」が生まれます。双方の心の中に「頑張る理由」が生まれ、利害衝突や対立の解消と同時に、人材や組織全体の成長につながるこの「絆」こそ、私が推奨している「絆徳経営(ばんとくけいえい)」の基本となるわけです。これこそが、持続可能な経営の神髄です。「対立の人事」から「絆徳の人事」への移行こそが、これからのビジネスリーダーに求められることなのです。

それでは、具体的な「共通のゴール」として、例えばどのようなテーマを設定できるのでしょうか?いくつかの事例をあげるとしたら、それは「お金」、そして「時間」のゆとりなど、社員が素朴に願うことを、会社のゴールとして設定するだけでいいのです。

「お金」についての共通のゴール。会社のゴールとして、給料を上げることを設定しよう

以前から、私は経営者のみなさまには、社員の給料を上げることを推奨してきました。私が申し上げるまでもなく、社会的にその流れはもう止まりません。例えば、今年3月、ユニクロを展開するファーストリテイリングが、国内勤務の正社員となる約8400人の賃金引き上げを発表して話題を集めました。引き上げ率は最大で40%。新入社員は、現行の25万5000円から30万円に。入社後1〜2年で就任する新人店長にいたっては、29万円から39万円と発表されました。この背景には、ファーストリテイリングの売上の半分を海外で占めていて、欧米を中心にした海外の従業員の方が日本より賃金が高いことにあります。

今年の春闘で岸田総理が経済界に対して物価上昇率を上回る賃上げを求め、日本生命が平均7%、サントリーホールディングスが平均6%の賃上げを表明したニュースも記憶に新しいことと思います。

こういった動きによって、優秀な人材の海外流出化をストップさせ、年功序列的な日本経済の構造的問題に真っ当から取り組む流れが生み出されることでしょう。給料が上がったことによる従業員のモチベーションアップは言うまでもありません。

給料を上げることは、人財に投資することに直結します。給料が高く支払える仕組みができるように、何よりもマーケティングに取り組むことです。利益があがるマーケティングの仕組みを作れない会社は、採用がとても難しくなり、生き残れなくなりますよ、ということがはっきりしてきているといっても過言ではないでしょう。
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文=中村麻美

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