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2023.04.30

ドラえもんをつくる研究者と「近視をなくす」ジンズ副社長が見据える未来

(左から)大澤正彦、田中亮

田中:ドラえもんをつくるプロジェクトは、今どの段階にあるのですか。

大澤:このプロジェクトは、2014年から2044年までの30年計画でスタートしたのですが、現在はその4分の1である第1クオーターを過ぎ、第2クオーターのスタート地点で走り始めているところです。

第1クオーターでは、2020年12月に日本大学内にオープンなコミュニティ「次世代社会研究センター(RINGS)」を設立し、20〜30のプロジェクトを走らせてきました。大学をコミュニティ化し、その中で多くの人が協力し合って研究したり、自分のやりたいことを思いっきりやったりできる場をつくったんです。この組織を通じてドラえもんを一緒につくる仲間ができ、プロジェクトの進捗としても、30%くらいは進みました。

第2クオーターでは研究に集中できる体制を整え、その後の2クオーターでドラえもんをつくりきろうと思っています。「ドラえもんを1人で勝手につくりました」というのではなく、皆の思い思いのドラえもんを総和して、それが自然と形になったようなものをつくりたいと思っています。

——もしお2人がコラボするとしたら、どのようなモノをつくりたいですか。

大澤:たくさんありますね。例えばジンズ ミームでセンシングしたデータを学習したロボットをつくるとか。ジンズ ミームを装着していると、喋らなくてもロボットが自分の気持ちを分かってくれるとか。



田中:目には感情が表れますもんね。センシング技術を応用して、将来的には人の気持ちを理解するためのメガネができると面白いですね。

大澤:例えば自閉症の方は心を読むのが苦手で、それが原因でうまくコミュニケーションが取れないところがあるので、そのメガネがコミュニケーションの手助けになるかもしれないですね。

田中:まさにジンズが目指す「社会課題をテクノロジーで解決」ですね。

——お2人が実現したい「未来」とは。

田中:ジンズのメガネを世界中の人に届けたいです。日本ではありがたいことに、街中でジンズのメガネを掛けている方を見かけることがあるのですが、海外に行くとほとんどないのが残念で。

海外の方に買っていただくためには、リアルでもデジタルでも、お客さまのニーズや状況に合わせて、自由に購入できるようにする必要があると考えています。そのためにはデジタルでの体験づくりをする必要がありますが、メガネは度数を測ったりフィッティングをする必要があるので、デジタルとの相性が良くないんです。そこにどうチャレンジできるかが、今の課題ですね。

大澤:僕はドラえもんをつくる前から、モノづくりが好きな人が自分の好きなものを思いっきりつくれる世の中にしたいと思っています。

今のモノづくり環境では、数値やデータで“何かの役に立つ”という根拠が出ていなければつくりにくい。ですがそれでは結局、分かりやすい既存の価値軸に当てはまるモノしか生み出せない気がするんです。

そうではなく、子どもの頃のようにただ“つくりたい”という感情や、ワクワク感のままに皆がモノづくりをできれば、そこからいいモノが見つかっていくような世の中になれば、それが多様性にもつながっていくと思っています。

2029年までにそうした環境を当たり前にして、そのうえでドラえもんの開発のラストスパートに集中したいと思っています。

文=三ツ井香菜 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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