医療が発達し国の平均寿命が伸びるなか、一人ひとりの生活の質を維持し、社会保障制度を持続可能なものとするためには、平均寿命の伸びを上回る健康寿命の延伸、つまり、健康寿命と平均寿命との差を短くすることが重要と言われています。
増え続ける医療費や介護費を、ますます少子高齢化する社会では支えられないことは明白です。この構造の問題、あるいは解決の糸口はどこにあるのか。この現状を、レストランで食文化を育んできた立場から解釈してみたいと思います。
今回は一つの事例として、ご縁があって仕事をさせていただいている京都府を取り上げます。京都府は「京の健康〜健康課題を解決するヘルスケア産業の創出に向けて〜」という冊子を発行していて、オンラインでも読むことができます。これは京都府 きょうと健康長寿・未病改善センターによる京都府民健康・栄養調査等の集計結果です。
また、それに基づく「きょうと健やか21(第3次)」というプロジェクトがあり、様々なデータを公表されているので、読み込み、咀嚼させていただきました。
まず、京都府の平均寿命は男女ともに全国平均以上です。ただ、健康寿命に目を向けると、女性の健康寿命は全国44位という明るくない結果が出ています。
平均寿命:男性81.40歳(全国3位)、女性87.35歳(同9位)
健康寿命:男性71.85歳(全国9位)、女性73.11歳(同44位)
ちなみに、京都府における死因は、1位が悪性新生物(がん)、2位は心疾患、3位は肺炎です。
これらの死亡原因につながる生活習慣病に注目し、塩分摂取量を調べてみると、京料理と言われる薄口の料理のお陰なのか、塩分の摂取量は全国平均以下。薄口醤油は色と裏腹に塩分濃度が濃いにも関わらず、出汁が浸透していてumami文化が育まれていると言えそうです。
ただ、野菜の平均摂取量に目を向けると、“京野菜”の知名度の割に、その数字は全国平均以下。野菜に含まれるカリウムには、ナトリウムの排出をたすけ、塩分の取りすぎを調整する役割を果たしますが、それが不足していると考えられます。
また、京都を散策し繁華街に出て気づくのは、和牛をはじめとするお肉を食べるお店が多いこと、そして、いたるところに喫茶店があることです。お茶文化の名残と見ることもできるかもしれませんが、これは間食に繋がる環境といえます。