テクノロジー

2023.04.13 17:00

「量子コンピュータ」到来後の未来とは──北野唯我「未来の職業道」ファイル

量子コンピュータネイティブ誕生

北野:これから量子コンピュータは、どのように社会へ溶け込んでいきますか。

大関:量子社会や未来社会の恩恵に、僕らはソフトウェア的にあずかれるはずです。いま日常生活を送っているうえで、スマホで「すごく複雑なことをやっているけど誰も気づかない」のと同じでみんな何も感じない。それこそ、小中高で「情報」の授業が始まったり、試験になったりしていますが、そのなかで「量子コンピュータというものがあります」と普通の顔をして現れるんだろうと思っていて。むしろ、お子さんのほうが「お父さん、そんなことも知らないの?」みたく普通に使う感じになるのでは。

北野:新しい世代は「量子コンピュータネイティブ」な感じになる。

大関:僕もそうですが、コンピュータは原理を知らないでそのまま使っています。プログラミングだって「こう書けば、こう動くよ」としか教わっていなくて「なぜ?」と言わないじゃないですか。量子コンピュータもそうやって始まると思うんです。

僕は「量子コンピュータの使い方講座」みたいなのをやるんですが、絶対に原理を教えないんですよ。どうでもいいから。教え方の順番って本当に難しい。原理を教えちゃうとつまんないですよ。「いまから手品をやります、手品の種はこうです」と言うわけじゃないですか(笑)。

本当は逆で。量子コンピュータを触ると「こんな結果が出てきます」ということだけ教えるんですね。最近では高校生がゲームをつくり始めました。ゲームって、ガチャゲーもそうですけど、結局は「乱数」なんです。操作しているときに突然、敵が現れて、倒すと経験値がもらえて喜ぶ。彼らは量子コンピュータを「触れることができる乱数」と解釈したみたいで、プレイさせてもらったら、これが面白いんだ。

北野:まさにネイティブ世代。

大関:世界が変わるということは、認識が変わるんですよ。変えようと思って変わるものでもなくて、気づいたら変わっている。それを体感できる時代に来たんだなと思います。

量子力学の授業って本当につまんないんですよ。教科書なり板書なりに書いてあることはわかっても「見たことねぇもん」となるんです。「ウソ言ってんじゃねえか、こいつ?」と。いまは、量子コンピュータがあるおかげで「ほらこうなったでしょ?」と試せるんですよ。すごい理解しやすいだろうな、いまの子たちは。

D-Wave Advantage 量子コンピュータ

カナダD-Wave Systems社製、量子アニーリング(焼きなまし)方式を用いる量子コンピュータ。従来のコンピュータのように、情報を0か1で表すのではなく、0または1あるいはその両方を同時に取りうる「量子ビット」を使用。量子トンネル効果にしたがう「量子の重ね合わせ」が、多数のビットの組み合わせを同時に取り上げて処理することを可能にしている。
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文=神吉弘邦 写真=桑嶋 維

この記事は 「Forbes JAPAN 特集◎私を覚醒させる言葉」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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