ウェイン・ショーターの古い曲を聴いて衝撃を受けましたと伝えると、「僕も(当時)衝撃受けました。今でも新鮮だよねー」と返信が来たり、京都から舞妓さんの動画を送った時には「そんなに舐める様に撮って怒られないのー?」など毎回面白がってチャーミングな返事をくれた。
同時期に闘病していた信藤さんの病状を気にしてLINEをくれる時もあった。昨年末あまり良くない状態だと連絡すると「そうかあ、厳しいなあ。人のこと言えないけど。笑 幸宏も大変だし。みんなね、いつかは通る道だから」と返信があった。年が明け、坂本さんの誕生日に送ったLINEには、「ありがとう。悲しい誕生日です」と返ってきた。高橋幸宏さんが亡くなった数日後だった。最後にLINEをしたのは3月21日。珍しく言葉はなく「いいね」の絵文字だけだった。
坂本さんは必ず復活してくれると信じていたのは、自分の中で無意識に現実逃避していたのかもしれない。僕にとってアイドルであり、道しるべであり、精神的な核であった坂本さんが居なくなってしまった喪失感は言葉にできない。
この数日、ずっと頭の中でアルバム「async」の冒頭曲「andata」が流れている。まるで残された我々を慰めるために坂本さんが書いてくれたレクイエムのようだ。
坂本さん、30年間にわたり本当にお世話になりました。これからも坂本さんが見ていると思って精進していきます。「タジィマックス、本当にそれで良いの?」という優しい声を聞きながら。
田島一成◎写真家。1968年東京都生まれ。写真家・五味彬氏アシスタントを経て独立後、1989年からパリ、ニューヨークで活動。2002年から東京を拠点に。ファッションを中心に、広告、音楽系、TVコマーシャルにも活動の場を広げる。1997年 American Photographie Annual(アメリカ写真年鑑)掲載。2007年、2013年ADC賞受賞。著書に、坂本龍一写真集「N/Y」(リトルモア)「WITHRED FLOWERS」(akio nagasawa publishing)など。www.instagram.com/tajjiemax/