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2020.12.01 12:30

「仕事」でなく「作品」を。写真家 田島一成がアートの世界に挑む

写真家 田島一成(たじま かずなり)

嵐を起用したソフトバンクの広告やPerfumeの最新シングルのPV、資生堂やユニクロのCMなど、おそらく誰もが目にしたことがあるであろうビジュアルを数多く撮影しているのが、写真家、田島一成だ。

1968年、東京生まれ。学生時代に写真家・五味彬氏のアシスタントを経て独立、1989年からパリ、ニューヨークで活動し、2002年に東京でMILD in.を設立。広告やファッションを中心に、ミュージックビデオ、TVCMの世界で第一線を走り続けている。

その田島の個展が、12月3日から、東京の「Akio Nagasawa Gallery Aoyama」で開催される。本展では、田島がオファーされた“仕事”ではなく、自らと向き合い生み出した“作品”を初公開する。テーマは「WITHERED FLOWERS」、直訳すると「枯れた花」。彼はなぜ、いまアートの境地に足を踏み入れるのだろうのか。

きっかけは、坂本龍一


90年代、田島は渋谷系音楽シーンにおけるビジュアルで注目を浴びると、tajjiemax(タジイマックス)の名で、瞬く間にひっぱりだことなった。田島を写真の世界に誘ったファッションフォトのほか、ポートレートの分野でも活躍。さらには動画も手がけるようになり、デビューから30年余りとなる今も、その勢いは衰えない。

その田島が“作品”を作ろうと思ったのはおよそ6年前。「ニューヨークにいたときからお世話になっている」という坂本龍一がディレクターを務めた札幌国際絵芸術祭2014に参加したことがきっかけだった。

「坂本さんから『アーティストとして参加して』と声をかけられて、一緒にヘリに乗って札幌の街や風景を撮影して、展示したんだけど……」と田島は静かに振り返る。

「僕は、ちょっと呼ばれて参加した、どちらかというと商業写真家。ほかはみんな現代アーティストで、自分で作品を生み出している人ってすごいなと、コンプレックスのようなものを感じました」

田島も自分の名前で仕事をしていることには違いない。「でも、僕の仕事はどれも、基本的に誰かに頼まれたもの」で、アーティストが作るそれとは別物だという。「そこで初めて、自分でゼロから作品を作りたいという欲が出た。それまでそんな風に思うことはなかったけれど、すごく落ち込んで、鬱になったりもした」

後日、それを坂本に話すと、「そういうことになると思ってわざとやったんだよ、頑張って作品を作りなさい」と背中を押されたという。
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編集=鈴木奈央 写真=小田駿一

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