1968年、東京生まれ。学生時代に写真家・五味彬氏のアシスタントを経て独立、1989年からパリ、ニューヨークで活動し、2002年に東京でMILD in.を設立。広告やファッションを中心に、ミュージックビデオ、TVCMの世界で第一線を走り続けている。
その田島の個展が、12月3日から、東京の「Akio Nagasawa Gallery Aoyama」で開催される。本展では、田島がオファーされた“仕事”ではなく、自らと向き合い生み出した“作品”を初公開する。テーマは「WITHERED FLOWERS」、直訳すると「枯れた花」。彼はなぜ、いまアートの境地に足を踏み入れるのだろうのか。
きっかけは、坂本龍一
90年代、田島は渋谷系音楽シーンにおけるビジュアルで注目を浴びると、tajjiemax(タジイマックス)の名で、瞬く間にひっぱりだことなった。田島を写真の世界に誘ったファッションフォトのほか、ポートレートの分野でも活躍。さらには動画も手がけるようになり、デビューから30年余りとなる今も、その勢いは衰えない。
その田島が“作品”を作ろうと思ったのはおよそ6年前。「ニューヨークにいたときからお世話になっている」という坂本龍一がディレクターを務めた札幌国際絵芸術祭2014に参加したことがきっかけだった。
「坂本さんから『アーティストとして参加して』と声をかけられて、一緒にヘリに乗って札幌の街や風景を撮影して、展示したんだけど……」と田島は静かに振り返る。
「僕は、ちょっと呼ばれて参加した、どちらかというと商業写真家。ほかはみんな現代アーティストで、自分で作品を生み出している人ってすごいなと、コンプレックスのようなものを感じました」
田島も自分の名前で仕事をしていることには違いない。「でも、僕の仕事はどれも、基本的に誰かに頼まれたもの」で、アーティストが作るそれとは別物だという。「そこで初めて、自分でゼロから作品を作りたいという欲が出た。それまでそんな風に思うことはなかったけれど、すごく落ち込んで、鬱になったりもした」
後日、それを坂本に話すと、「そういうことになると思ってわざとやったんだよ、頑張って作品を作りなさい」と背中を押されたという。