もう1つのカテゴリーには、戦闘中に親や養育者が死亡、負傷、拘束、失踪したことで同伴者がいなくなった子どもや、いわゆる「ろ過」プロセスで家族と引き離された子どもが含まれる。(訳注:ロシア当局はウクライナの占領地で拘束した地元住民を尋問していると指摘されている。この尋問プロセスが「ろ過」と呼ばれる。)
欧州評議会は次のように指摘する。「ロシア軍の一時的な支配下に入った地域では、ロシア各地やクリミア半島などロシアに占領されたウクライナ領で、娯楽キャンプに送られた子どもたちもいる。親が直接引き取りに来ない限り、キャンプ当局が引き渡しを拒否すると言われているため、規定の滞在期間が終わっても、多くの子どもたちが親元に戻されていない。このようなキャンプに収容された子どもたちは、親ロシア的な世界観やウクライナ人のアイデンティティーをおとしめる歴史物語に洗脳され、反ウクライナ感情が一般化しているとも言われている」「家族や養育者から長く離れることで生じるストレスや不安は、ロシアに連れ去られた多くのウクライナの子どもたちに壊滅的な長期的悪影響を及ぼす可能性がある。これは、特別な支援が必要な子どもたちや施設に入れられた子どもたちなど、最も弱い立場の子どもたちに特に当てはまる」
ICCが子どもに対する戦争犯罪に焦点を当てたことは、この軽視されがちな犯罪に対する正義と説明責任に向けた重要な一歩といえる。しかし、状況に対処するためにはさらなる対策が必要だ。そのため、欧州評議会はウクライナの子どもたちを家族や法定後見人と再会させる仕組みの確立などを求めてきたのだ。ミヤトビッチ人権委員は「子どもの利益を最優先にする原則を十分に尊重した上で、離散したすべてのウクライナの子どもの居場所を特定し、追跡するとともに、家族または法定後見人と再会させる努力を追求すること」を、欧州評議会の全加盟国に呼び掛けた。また同評議会は国際社会に対し、同伴者のいないウクライナの子どもたちの家族との再会を促す分野で活動する信頼できる組織を支援するよう喚起した。同評議会は最後に、子どもに対する犯罪の責任者全員に正義と説明責任を追求するよう訴え掛けた。
ウクライナの子どもたちが帰還し始めているのは、好ましい展開といえよう。だが、それ以上に多くの子どもたちが行方不明になっており、国際社会はそういった子どもたちの帰還を優先させなければならない。
(forbes.com 原文)