従業員3万人強を抱える巨大企業でありながら、“それ”をうまくできているのが、138年の歴史を誇るキリンホールディングスだ。社員の熱量をうまく企業発信に紐づけた「オウンドメディア戦略」が注目を集めている。
その仕掛け人は、『オウンドメディア進化論』(宣伝会議)を上梓し、2022年のWeb人大賞を受賞した平山高敏氏。Web人大賞は、広くデジタルを活用したマーケティング、コミュニケーション等の原動力となった人物に贈られる賞で、まさにキリンのオウンドメディア戦略が評価された証明であろう。
オウンドメディアを展開する企業やブランドは多いが、それを成功させる秘訣とはなにか。平山氏に聞いた。
平山氏は2018年にキリンに転職で入社した。前職は「ことりっぷ」という熱狂的なファンコミュニティを生み出したメディアのWebプロデューサーとして手腕を振るった。いわばWebメディアのプロである。
入社当時、その視点でみるキリンは「本当に真面目な会社」かつ「コンテンツの宝庫」だったという。
「質実剛健で、地に足のついた精神が根付いているといいますか。でも、僕はそこにこそ価値があると思っています。特にサステナビリティやトレーサビリティなどが社会的に必須とされる昨今、そのような実直でブレのない姿勢は、お客さまの絶大な安心や信頼に繋がります。
また、入社してまず驚いたのは、社員の熱量の高さでした。皆さんが語る商品に対する愛情や思い入れに感動しっぱなしで。これは良いコンテンツが作れると確信したんです」
質実剛健な企業による、熱量のあるストーリーの発信。その出し先としては、当時まだ新興プラットフォームだった「note」を選んだ。記事コンテンツを手軽に発信、共有できるnoteは、SNSのようなフォロー機能や月額制サブスク機能であるメンバーシップなど、オープンでいながら密度高くコミュニケーションできるという特徴がある。
SNSはリアルタイムの情報を発信するが、noteはストーリーを伝えるプラットフォームなので、プロダクトの背景や社員の想いを伝えるのに相性が良い。
「noteはとにかく小さく始めることができることも魅力。Webメディアをゼロから作ってしまうと、かなりの労力と費用がかかります。noteであれば記事作りに専念できますし、コストも抑えられます。プラットフォームなので、さまざまな機能を使えば、オーガニックに読者の共感を生んだり、シェアからの認知を広げていける。非常にヘルシーなんですよ」