その問いの答えとなるのが、キリンラガービール愛を語る「♯今日はキリンラガーを」という企画だ。キリンの従業員のラガー愛溢れる記事を出すと、それを見た読者から「僕の、私のキリンラガー」の声がTwitter上で多数シェアされ、投稿リーチは1500万を超えた。
「正直、ひとつの企画がここまで反響を呼ぶとは思ってもみませんでした。でもこれによりオウンドメディアは単なる発信拠点ではなく、コミュニケーション装置になり、それをきっかけに、ファンの共感を同心円状に広げていく可能性を見出せたんです」
当たり前だが忘れがちなのが、大企業や有名ブランドにも、当然それに関わる多くの『人』が存在するということ。その『人』が真摯に自分の役割を真っ当していれば、そこから紡がれる熱のある物語は、やはり共感を生み出しやすい。
こうした反響は、読者はもちろんキリン社内にも徐々に知られるようになり、「私のブランドも取り上げてほしい」「この活動に注目してほしい」と声が掛かるようになった。良質なコンテンツが自動的に集まり、多くの発信を可能にしていく良い循環が生み出されたのだ。
立ち上げ当初はどちらかというと片隅でこじんまりとやっていたキリンのnoteは、徐々にその活躍の場を広げて、次のような使い方もされるようになった。
1. noteコンテンツの横展開
キリングループの企業Webサイトへ転載することで、noteのフローコンテンツをストックコンテンツに変換し、SEO対策にも寄与。公式SNSとも発信連携。
2. 社内コミュニケーションのツールに発展
関連会社の社長が社員にメッセージを伝える手段としてnoteを起用。
3. BtoBの営業資料として活躍
noteに掲載された社員による開発秘話などを営業担当が利用。
4. グループ会社・資本提携先とのコンテンツ開発
グループ会社・資本提携先を取材対象としたコンテンツ展開を行うことで、アウターのみならずインンターナルの理解促進に寄与。
5. 採用活動の媒体として機能
noteの記事を読むことで、応募者に社風や働き方について理解を深めてもらう。
6. ブランドエクイティの醸成
企業の文化や歴史をストックしていくアーカイブ機能のような役割。無形資産が長期的なブランディングに寄与。
他にもさまざまなポジティブな波及が生まれ、立ち上げ当初はキリンビールのみを扱う「キリンビール公式note」だったのが、2021年にはキリングループ全体の情報発信を担う、「KIRIN公式note」にアップデートされることになった。
「例えば社長のメッセージは、社内メールや社内報などのインターナルメディアで流してももちろん良いのですが、noteのように『世の中に出る』ことを前提に作られたものって、やっぱり独特の高揚感があり、社員にも親しまれやすいんです」