1日8000歩、週1~2日でも死亡率低下 それでも米国人には難しい理由

Sean Gallup/Getty Images

週に1~2日、8000歩歩くだけで死亡リスクを下げることができるとの研究結果が28日、米国医師会雑誌(JAMA)に発表された。もっとも、1日平均5000歩弱しか歩かない米国人にとっては、この目標すら達成は困難かもしれない。

京都大学とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームは、2005~06年に記録された米国の成人3101人のデータを調査した。すると、8000歩歩いた日が週に1~2回あった人は、1回もなかった人と比べて10年後の全死因死亡率が14.9%低く、心血管疾患による死亡率も8.1%低下した。

年齢別では、65歳以上で死亡リスクが19.9%下がり、65歳未満では7.4%低下した。性別でみると、男性が20.8%減、女性が11.6%減で、男性の方がメリットが大きかった。

Mayo Clinic(メイヨー・クリニック)は米国人に対し、ウオーキングなどの適度な運動を1日に少なくとも30分間するよう推奨している。

医師の推奨する歩数は一般的に1日1万歩だが、この目安は変わりつつあり、年齢やフィットネスの目標に合わせて目標を設定するのが望ましいとの研究結果が増えている。今月発表された1999~2018年の研究15件のメタ分析結果では、60歳未満では1日8000~1万歩で早期死亡のリスクが低下するが、60歳以上では1日6000~8000歩でもリスクが下がることが示された。

ただ、米国人の平均歩数は1日4800歩だ。米疾病対策センター(CDC)が2017~20年に行った調査では、平均して各州人口の25%以上が直近1カ月間に仕事以外で運動をしていないと回答した。

CDCや、メイヨー・クリニックのスポーツ医学専門医シェルビー・E・ジョンソンによると、運動に対する物理的・環境的な障壁として、時間がないこと、ジムや公園など安全に運動できる場所がないこと、悪天候、道路に歩道がなく交通量が多いこと、身体的な障害や痛みなどが挙げられている。

心理的な障壁もあり、やる気の欠如、ジムでの居心地の悪さ、運動に不慣れであること、社会的支援の不足なども、人々が運動しない要因になっているという。

こうした障壁の中には、比較的簡単に解決できるものもある。ジョンソンは、時間に追われているなら、1日30分の運動を10分ずつ3回に分けて行えば、同様の運動効果を得られると述べている。やる気の欠如は、体を動かす時間をスケジュールに組み込んだり、友人と一緒に運動したりすることで解決できる。筋肉や関節に痛みがある人は、水泳やウオーキングなど関節への負担が少ない運動を試してみるとよいだろう。

世界保健機関(WHO)の推計によると、運動不足を一因とする死者数は世界で年間320万人に上る。また、医学誌「The Lancet(ランセット)」に発表された2016年の研究結果では、運動不足は年間推計約540億ドル(約7兆円)もの医療費に関連しているとされている。

forbes.com 原文

編集=荻原藤緒

ForbesBrandVoice

人気記事