イリノイ大学シカゴ校の研究者たちは、オメガ3脂肪酸の一種であるドコサヘキサエン酸(DHA)の新しい型を開発した。この成分は、眼の網膜に浸透し、アルツハイマー病患者の視力低下を緩和すると言われている。アルツハイマー病は、認知能力と記憶を徐々に侵す最も一般的なタイプの認知症だ。
マウスを使った実験では、この脂肪酸を摂取することで、マウスの網膜に存在する脂肪酸の量が増え、人間のアルツハイマー病患者と同様の視覚障害が軽減されることが発見された。
魚油カプセルやその他のサプリメントに含まれる典型的なDHAは、トリアシルグリセロール(TAG)型DHAと呼ばれる型である。TAG型DHAは体の他の部位に対する効果はあるが、血流から網膜へと移動できないため、眼には届かない。今回研究者らが作ったのは、新しいリゾリン脂質型DHA(LPC型DHA)だ。マウスを用いた研究では、LPC型DHAは網膜のDHAを増加させ、アルツハイマー病態プロセスに関連する眼の問題を軽減することに成功した。
ミシシッピ州立大学の研究者ケンドラ・ファローによれば、主に高齢者が罹患する神経変性疾患であるアルツハイマー病では、目がまだ使える状態でも、脳が視覚情報を処理できなくなり、周辺視野喪失などの視覚障害をともなうことが多いという。
米国眼科学会によれば、視覚障害には、奥行き知覚の変化、読書障害、対照的な色の判別の問題などがよく含まれる。
また米疾病管理予防センター(CDC)によれば、2020年時点でアルツハイマー病を患う米国人の数は580万人で、2060年には1400万人に達すると予想されている。アルツハイマーは、米国では成人の死因の第6位を占める。
アルツハイマー病の治療法は確立されていないが、近年、男性用勃起不全治療薬「バイアグラ」の使用などの、発症リスクを低減させる治療法が見つかっている。2021年にNature Aging(ネイチャーエイジング)誌に掲載された研究によれば、バイアグラ(シルデナフィルとも呼ばれる)を使用した成人のアルツハイマー病発症リスクは69%減少していた。 しかし、このリスク減少は、アルツハイマー病と診断される確率が低い裕福な成人による使用など、他の要因の結果である可能性もあると研究者は警告している。
2021年、米国食品医薬品局(FDA)は、ボストンに本社を置くバイオテクノロジー企業バイオジェンの抗体治療薬アデュカヌマブを承認した。この治療薬は、脳内のタンパク質を攻撃して病気の進行を遅らせる狙いがある。だが迅速承認を行ったFDAの決定は、用いられた臨床データに基いて批判されている。またFDAは1月、バイオジェンと日本の製薬大手エーザイの抗体治療薬「レカネマブ」を承認したが、この治療薬も病気の進行を遅らせることを目的としている。
スイスの製薬会社ロシュは先週、大手製薬会社イーライ・リリーと共同で、アルツハイマー病の早期発見に役立つ血液検査を開発する計画を発表し、成人の早期治療ができるようになる可能性があることを明らかにした。具体的には、血液検査で、病気の発症に関係する血液中のタンパク質の濃度を測定する。
(forbes.com 原文)