近年、スマホやスマートウォッチが普及したことで、医療機関に行かなくても「スリープテック」を使って自分の睡眠に関する情報を知ることができるようになった。睡眠時間はもちろん、眠りの深さやいびき、寝返りの回数など、デバイスやアプリによって様々なデータがとれる。
矢野経済研究所(2022年)によると、国内のスリープテック市場は2025年には100億円以上に拡大する見込み。睡眠にまつわる問題の改善を狙った商品も人気で、機能性表示食品「ヤクルト1000」などの飲料や、「ナイトミン 耳ほぐタイム」(小林製薬)といったアイテムが話題になった。ほかにも、ベッドや照明、空調など様々な商品で睡眠改善がうたわれている。
ブレインスリープによると、睡眠の質の低下は仕事における生産性の低下にもつながり、経済的損失を生むという。では、スリープテックを活用して睡眠とうまく付き合い、パフォーマンスを向上するには、どうすればよいのか。特にデータ計測系のスリープテックを活用している研究者、起業家にヒントを聞いた。
1.大澤正彦(AI研究者/日本大学文理学部情報科学科助教)
撮影=小田光二
──1日の睡眠スケジュールは?
睡眠時間は6時間程度を確保したいと思っていて、目標としているのは、20時入眠、2時起床です。ただ、現状は入眠時間も起床時間も遅れがちで、21時〜4時、22時〜6時などに落ち着いています。
──活用しているスリープテックは?
Apple Watchユーザーなので、「Auto Sleep」というアプリをつかっています。Apple Watchをつけて眠るだけで、睡眠時間、睡眠の質、睡眠の深度、心拍数などを記録してくれます。この計測データをもとに睡眠の質の定量化をしています。
──スリープテックに興味を持ったきっかけは?
元々は超ロングスリーパーで、学生時代は10時間ほど寝ていたのですが、大学の教員になり、子どもも生まれて、どうしても睡眠時間がとれない状況になりました。その結果、体調を崩して入院したこともあって。
育児と仕事を両立するために色々と模索した結果、20時に子どもと一緒に寝て、2時に起きて仕事をすればなんとか回ると気が付きました。ただ、毎日それを続けることが体力的に厳しく、「だったら睡眠の質をあげるしかない!」と思い、スリープテックを活用しながら睡眠の質の向上を目指しています。
──睡眠の「質」に気を遣いはじめて、体調面、精神面などで変化はありましたか?
体調は良くなった気がします。睡眠を定量化しながら、寝る時の工夫だけでなく、湯船につかるとか、腸内細菌に気を使うとか、いろいろ実践したので、体のリズムができているように感じます。そもそも入院するほど悪化していたので、普通に戻ったくらいなのかもしれませんが…。
例えば、「お酒を飲むと眠りが浅くなる」という話をたくさん聞いても、あまり真に受けてなかったのですが、睡眠を定量化すると露骨に眠りが浅くなっていて、納得しました。それ以来「眠りの質が良くなる・悪くなる」と言われているものを試しながら、定量化して、本当に良くなったもの・悪くなったものを自分なりに分けていきました。
精神面に関しては、良くなったというよりは、自分の精神状態の変化に気が付きやすくなったかもしれません。以前は、精神的に上がっていようが、下がっていようが、気合いで仕事していましたが、「今日は不調かも?」と気がついて、少しペースを落としてみたり。という調整をするようになった気がします。