内山:民間企業では、日本航空や損害保険ジャパン、パナソニック、アクサ生命保険といった大手企業を中心に、約80社がFamieeの受け入れを表明し、福利厚生のほか、医療・生命保険・金融・不動産などのサービスに導入してくださっています。
また、民間企業に限らず、千葉県市川市・木更津市、宮崎県日南市といった自治体とも協定を結び、各自治体が発行するパートナーシップ証明書との連携を図っています。
【famieeアプリの使い方】パートナーシップ証明書の申請方法
「うちの会社は平等」?制度からこぼれ落ちていたマイノリティの存在
——そもそもなぜこの活動を始めようと思ったのでしょうか?課題意識を持つようになった原体験についてお話しいただけますか。内山:私がCEOを務める会社で、「社員の気持ちがわからない」と10年間ほど苦しみ続けてきた経験が原点になっています。
たとえば社員が一生懸命作ったプロダクトに対して、社員をねぎらうことよりもプロダクトの改善を優先し「ここが使いづらい」「ここにバグがある」と、どんどん指摘してしまっていました。すると中には心が折れてしまう社員もいて、「もうあなたとは一緒にやっていけません」と去って行ってしまうのです。
一緒に世界を目指そうと思っていたメンバーが、どんどん抜けていく。社員の気持ちを想像せずに傷つけていたことに気づき、克服するまで10年もかかったんです。それから経営者として上場も経験し、採用や教育、福利厚生の整備などを通して「やっと僕も社員の気持ちがわかるようになった」と、自信を持てるようになれました。
しかし数年前、とあるイベントでLGBTQ+の方々によるセッションを聞いていたときに、自分が情けなくてボロボロと涙が止まらなくなったんです。お恥ずかしいことに、その時の僕は「LGBT」という言葉さえ知りませんでした。
社員の前で「うちの会社は平等だ」なんて言っていたにもかかわらず、当時の僕たちの会社にはマイノリティの方々に向けた制度って一切なかったんですよ。
当事者からすると、「どうせわたしたちは守ってもらえない」という思いをさせていたことに、セッションを聞いてはじめて気づかされました。それと同時に、「僕はいまだに人の気持ちなんてわかっていない」と、自分のコンプレックスがよみがえり、わけもわからず涙があふれたわけです。
セッションが終わった後、登壇者のもとに駆け寄っていって「私に何か手伝わせてください」と声をかけました。それ以降、LGBTQ+に関する勉強会に参加したり、社内でも同性パートナーに関する勉強会の開催や福利厚生の制度変更を実施していき、その中でFamieeを立ち上げました。