人・資金・社会の雰囲気づくり、ルールメイキングへの道筋
——このプロジェクトをより大きな成功に導いていくための鍵は、何であると考えていますか?内山:ミッション実現のための道筋を示すことです。
Famieeには、「もし僕の会社にこんな人たちが集まったらどれだけすごい会社になるんだろうと」思うほど、各分野の一流の方がミッションに共感し、集まっています。ただし、ミッションへの共感だけでは不十分で、自律的な組織にするためにはミッション実現に貢献できる具体的な道筋がみえる必要があると思っています。
いまはまだ僕自身が模索中で、メンバーとディスカッションしながらその道を描こうとしている段階ですが、道筋が明確になれば、もっと自立分散型の組織になっていくのではないかと思います。
——ミッションだけでなく実現に向かう具体的な手段も提示することで、「この部分ならできる」「こういった協力ができる」と手を挙げてくれる人は増えそうな気がしますね。続いて、越えなければならない大きな壁は何ですか?
内山:ひとつは運営方法、もうひとつは資金です。
Famieeはボランティアメンバーだけで運営され、それぞれ本業があるため、本業が忙しくなるとそちらが優先にならざるを得ません。やるべきタスクをやってほしい気持ちもありつつ、ボランティアメンバーだけではやれることが限られています。
これを解決するためには、専任の人を雇う必要があるのですが、そのためには資金が必要。しかし、この資金を集めるための人的リソースもない。ここをどう解決するのかも、やはり大きなチャレンジですね。
現在は企業や個人の方々からの寄付で成り立っていて、僕の人脈だけで寄付を集めてきた最初期と比べれば、証明書の受け入れを決めた企業が寄付をしてくださるなど、寄付の規模も少しずつ増えてきました。しかし、まだまだ単発の寄付がほとんどなので、サステナブルにしていきたいです。
——たとえば、企業から年会費を集め、それが企業にとってプラスになるような仕組みもあるといいのかもしれませんね。企業として何かしらの経営指標に反映されると、意思決定がしやすくなるのではないでしょうか。
たとえば男性の育休取得率が高ければ「子育て支援に積極的な企業だ」という認識を持ってもらえるのと同じように、家族のあり方に対する投資活動を何かしらの指標としてあらわし、それが共通認識となるように社会の雰囲気を醸成していくことも重要です。
そのためにはサービスを正しく、丁寧に社会へ浸透させていくことが必要かと思いますが、そこに対する難しさやハードルを感じる瞬間はありますか?
内山:以前日本でとある方がマイノリティ向けのマッチングサービスを発表した際に、リリース初日から大炎上して翌日にはサービス停止に追い込まれたケースがありました。
開発者はマイノリティの方々へのインタビューを重ねながら慎重につくったはずですし、実際にニーズもあったのではないかと思います。しかし、さまざまなリスクを懸念する人からの批判が止まらなかった。これは本当に難しい問題であり、まさにFamieeにも関わる問題だなと思っています。
Famieeは新たな家族の形を認め、結婚により生じる権利と義務をカスタマイズできる社会を目指しています。しかし、たとえば婚姻(法律婚)の義務をカスタマイズしようとしたとき、パートナー同士の同意があった場合でさえ、「公序良俗を乱すサービスだ」と批判されるおそれは十分あるわけですから。