起業家

2023.04.01 18:00

同性パートナーもシングルマザー同士も。多様な家族形態が認められる社会を目指す「Famiee」

ホットリンクの代表取締役グループCEOであり、一般社団法人Famiee代表理事の内山幸樹氏。取材は拠点とするサンフランシスコからリモートで行われた。

近年、自治体により性的少数者や事実婚の人々に対して、「結婚に相当する関係である」と認めるパートナーシップ制度が自治体の間で広がりつつある。

しかしその地域や効力は限定的であり、2023年の現在もなお、同性婚や選択的夫婦別姓に関する国会の議論は進んでいない。その結果、当事者は「病院で同意書へのサインができない」「賃貸契約が結べない」など、日々の生活において、大きな障害に直面することも少なくない。

今後、「伝統的な家族観」が変わることはあるのだろうか。
 
進展が生まれない課題に対し一石を投じるのが、一般社団法人Famiee代表理事の内山幸樹氏。自治体によらない、民間発行パートナーシップ証明サービス「Famiee(ファミー)」の開発と提供を通して、法律を変えずに社会を変える方法を提示している。
 
このような社会課題に対して、個人や企業が向き合うべきこととは。

聞き手のKonel・知財図鑑代表、出村光世

自治体が異なれば無効に。パートナーシップ証明が抱える課題

——内山さんは、上場企業のCEOを務めるかたわらFamieeを立ち上げ、家族の多様化とともに生まれた社会課題の解決を目指しています。まずはFamieeのミッションや活動について、教えてください。
 
内山:ミッションは「多様な家族形態が当たり前のように認められる社会の実現」です。伝統的な家族の形を拡張し、同性パートナーはもちろん、シングルマザー同士が一緒に住み、子育てをすることも新しい家族の形になりうる。このようなさまざまな家族のあり方が認められる社会を目指しています。



活動は大きく分けて2種類あります。ひとつ目はブロックチェーン技術を活用し、公的な証明書に相当する「パートナーシップ証明書(以下・証明書)」を発行すること。こちらは現在、同性パートナーの方々のみが利用できます。

ふたつ目は、証明書が利用できる施設やサービスを増やすことです。たとえば生命保険会社やローン会社、病院などに協力してもらい、Famieeの証明書を持っていれば家族として認め、家族向けのサービスを受けられるように、企業のネットワーク形成に取り組んでいます。

——渋谷区をはじめとして、自治体によるパートナーシップ証明の取り組みが報道されることも増えてきたと思いますが、まだまだ地域が限定的ですよね。この取り組みを民間で行なうことは重要だと感じます。
 
内山:現在は255の自治体にパートナーシップの仕組みが広がっていることは、限定的とはいえとても素晴らしいことです。一方で、まだ課題もあり、例えば、自治体の証明書を発行してもその自治体のなかでしか効力を持たないというケースがあります。

渋谷区で証明書を発行した場合、渋谷区内であれば証明書は有効ですが、渋谷区外に転居してしまうと無効になってしまう。一部では自治体間連携が始まっているところもありますが、まだまだ不十分です。
 
また、一口に証明書といっても、どのようなルールでどのような効力を持っているのかは自治体によって異なります。たとえば生命保険会社でいうと、渋谷区が発行した証明書であれば家族として認められても、世田谷区が発行した証明書では家族として認められない、といった事態が起こっているんです。企業からすると、自治体による証明書の違いを把握し続けるのは非常に難しい。結局、「自治体の証明書は使いにくい」となっているのが現状です。
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聞き手=出村 光世 文=宇治田 エリ 編集=松岡 真吾

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