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2023.03.21

それでもWBCは続く 「生みの親」大リーグ重鎮が成長を確信する理由

創設当初のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の盛り上げにはイチロー選手らの出場が一役買った(Jed Jacobsohn/Getty Images)

デュプイによるとWBCの企画がもちあがった当初、最大のハードルの1つになったのは、スプリングトレーニング(春季キャンプ)中の開催になるという点に関して、選手会側から同意を取りつけられるかどうかだったという。

「1つ懸念されていたのは、大会の開催時期と、大会が大リーグの選手やスプリングトレーニングに与える影響でした」とデュプイは話す。「(球団)オーナーも選手も組合も、けがのリスクを懸念していました。正当なことです。それでも、これは野球の国際的な注目や成長にとってプラスになるという考えに、みな賛同してくれたのだと思います」

こうして選手側の支持を得られたWBCの主催者側にとって、さらにありがたかったのは、デレク・ジーター(ヤンキース)やチッパー・ジョーンズ(ブレーブス)、イチロー(マリナーズ)といった、のちに米野球殿堂入りするスター選手たちが、自国代表として続々と出場登録をしてくれたことだった。

「これに先立って、私たちは日本へのオールスターツアーでたくさん成功を収めていました。中国市場にもある程度食い込もうとしていました。アジアは野球の成熟市場だと考えていたわけです。いうまでもなく、中南米もです。キューバ代表チームに参加してもらうことができれば、大きな呼び物になるだろうという腹づもりもありました」(デュプイ)

デュプイは第1回大会当時、A組(日本、韓国、台湾、中国)の試合を観戦するために東京に飛び、始まって間もなかった「MLB.com」に自らブログを書いたという。「東京ドームは満員でした。日韓戦なんて、ものすごい盛り上がりでしたよ」

日本はこの大会に続き、2009年の第2回大会も制覇。2013年の第3回大会はドミニカ共和国が栄冠に輝き、2017年の第4回大会は米国が初優勝を果たした。

「選手たちは普段やっていることから抜け出して違ったことをやる覚悟を決め、そのためにトレーニングを調整することもいとわなかった。これは間違いなく大きな称賛に値します」とデュプイは強調する。「選手たちはWBCを受け入れてくれているのでしょう。彼ら自身、WBCに情熱を傾け、独自のルールや仕組みの制約のなかで精いっぱい真剣に取り組んでいると思います」

デュプイは「米国の野球ファンたちは、ぜいたくにも、世界最高の選手たち30チームがそれぞれ年間162試合行うのを見ることができます」と述べ、こう続けている。

「日本や韓国、欧州、中南米の野球ファンたちは、WBCという形式によって初めて、そうした選手たちがそれぞれの国や地域の最高の選手たちと対戦するのを観戦できるようになりました。そしてそれは、非常に心を揺さぶるものだった。これがWBCの成し遂げたことなのだと思いますし、今後、関心はさらに高まっていくばかりでしょう」

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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