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2023.03.21

それでもWBCは続く 「生みの親」大リーグ重鎮が成長を確信する理由

創設当初のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の盛り上げにはイチロー選手らの出場が一役買った(Jed Jacobsohn/Getty Images)

野球の世界一を決める「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の生みの親の1人であるボブ・デュプイ元米大リーグ機構最高執行責任者(COO)は、2006年に初開催されたWBCについて、自身も主催者側も当初から1回限りのものにする考えはなかったと明かす。「(2006年大会は)あくまで最初のバージョンという位置づけで、その開催で学んだこと、うまくいったことを取り入れながら進化していくものと想定していました」

日本がキューバを破って初代王者に輝いた第1回大会から17年後、5回目を迎えたWBCは大きな興奮と愛国的な熱狂を生み出している。もちろん、選手の参加などをめぐって批判的な意見も相変わらずある。

チームUSAは準々決勝でベネズエラに劇的な逆転勝利を収め、準決勝に駒を進めた(編集部注:米国は準決勝でキューバを下し、2大会連続の決勝進出を決めた)。他方、プエルトリコ代表のエドウィン・ディアス(メッツ)やベネズエラ代表のホセ・アルトゥーベ(アストロズ)らスター選手が大会中に負傷し、ファンからは悲鳴の声が上がった。そのため、大会の是非をめぐって議論がかまびすしくなっている。

ただ、見過ごさないようにしたいのは、米国代表の1人として出場しているトレイ・ターナー(フィリーズ)の次のような言葉だ。そこからは、米国チームのメンバーがこの大会に、大リーグのポストシーズンと同じくらい高いプライドと強い情熱をもって臨んでいることがうかがえる。

ターナーはベネズエラ戦の8回に放った逆転満塁弾について、FOXのインタビューで「大ホームランだった。最高だったよ」と振り返りつつ「こうした試合をするために僕らはここにいる。最後まで追いつ追われつの展開だった。途方もない試合だった」と語っている。

同じ試合では、米国のダニエル・バード(ロッキーズ)が投げた剛速球がアルトゥーベの右手に直撃するアクシデントもあった。アルトゥーベは試合後、親指を骨折していたことが判明し、所属先のアストロズから離脱を余儀なくされた。現時点で復帰時期は明らかになっていない。

また、ディアスは抑えを務めた15日のドミニカ共和国戦後、勝利を祝っていた際に右ひざを負傷し、膝蓋腱(しつがいけん)断裂と診断された。昨年末にメッツと5年1億200万ドル(約134億円)の大型契約を結んだ守護神は、今季の出場が絶望視されている。

ディアスやアルトゥーベのけがを受けて、ソーシャルメディア上では批判が沸き起こった。にもかかわらず、大会は引き続きスタジアムを観客でいっぱいにしている。球界の大スターであるマイク・トラウト(エンゼルス)と大谷翔平(同)が、それぞれ米国代表と日本代表として出場し、両チームとも勝ち抜いてきたこともあるのだろう。
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編集=江戸伸禎

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