公開された文書では、容疑者の詳細情報は伏せられていたが、連邦捜査局(FBI)がセイバーに2年間に渡って容疑者の行動履歴をリアルタイムで提供させ、追跡を試みていたことが記されている。この政府命令は1789年に制定され、政府が捜査と直接関係のない組織に対して負担にならない程度の支援を求めることができる全令状法(All Writs Act)に基づいて出された。フォーブスが以前報じたとおり、同様の命令は、2015年にロシアの悪名高いサイバー犯罪者を追跡した際や、2019年にハッキングの疑いがあるインド人逃亡者を追跡した際にも出されている。
「全令状法では、捜査を正当化する理由をほとんど提示する必要がなく、裁判所がこの法律に基づいてセイバーのデータへのアクセスを許可したことにぞっとする。もし、旅行記録へのアクセスが盗聴命令と同じ基準で扱われたとしたら、2年間もデータにアクセスする許可は得られないだろう(通常、盗聴命令の期間は30日間だが、繰り返し申請すれば延長することができる)」とフォックス=カーンは話す。
FBI、DEA、セイバーにコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。今回公表された令状に関する捜索でDEAに協力していたミネアポリス・セントポール国際空港は、捜査が進行中であることを理由にコメントを拒否した。
DEAは、ミネアポリスのケースでは、入国者の渡航記録を調べるのに裁判所の許可は必要なかったとしている。同局によると、麻薬の運び屋は、出発の直前まで必要な資金を確保していないことが多いため、フライトを直前に予約する乗客は疑わしいのだという。また、48時間以内の帰国者を疑うことについては「ミネソタ州に麻薬を密輸する者は、大量の違法薬物を保有するリスクを避けるため、すぐに帰国して売りさばこうとするケースが多い」と述べている。
警察の取り組みが、犯罪者の検挙にどれだけ寄与したかは不明だ。令状には、ミネアポリス・セントポール空港で、ある個人から3万3000ドルを差し押さえたことが記されている。その人物は、クルマの販売で得た金だと主張しているが、麻薬探知犬がマリファナの匂いを検知したことに加え、ロサンゼルスからミネアポリスへのフライトが怪しかったため、被疑者として認定された。DEAはまた、現金の量や束ね方が周到であったと述べている。しかし、裁判所の記録によると、この人物が麻薬を売っていたことを示す追加の証拠はなく、令状が公表された時点では起訴に至っていない。
(forbes.com 原文)