キャリア・教育

2023.04.03 09:00

「ドラマ型」はギャンブル 悔しい敗戦に学ぶ「意思決定」

この「日常型意思決定」領域には、意思決定と呼ぶには憚られるほどの細かな選択が包含されている。経営者のみならず、一社員の何気ない選択も含めて考えてみれば、企業内ではわずか1日だけでも、膨大な意思決定をこなしているはずだ。もしこれら無数の意思決定の精度を高めることができれば、それほど「ドラマ型」の出番はなくなる。

野球には、「本物の守備の名手にファインプレーは少ない」という格言がある。守備の上手い選手は、他人がファインプレーにするような打球でも、あらかじめ球の飛ぶ方向を予測して、正面で難なく捌いてしまうということだ。

つまり、経営においても、日常的な意思決定を通じ、すでに望むべき方向に舵が切れていれば、経営者はドラマチックな意思決定をしなくなる。

先の見えない世の中において、経営者が行う「ドラマ型意思決定」に、ギャンブル的要素を排除することは不可能だ。だからこそ、丁か半かの勝負はギリギリまで保留し、その前の目立たないステージにおいて、ドラマ型意思決定に陽が当たる回数を減らすための仕組みが必要なのだ。

冒頭のPK戦の話に寄せるならば、立候補制の是非を語ったところで、生産的な議論にはならない。PK戦というギャンブルに入ることを防ぐために、何気ない「日常的」プレー選択において何が変えられたか、を先ずはおさえておく必要があるということだ。

ということで、ここまで「創発回転型意思決定」と「ドラマ型意思決定」という2本の補助線を説明してきた。これらを踏まえて、今後は組織的な意思決定の実例を深めていきたい。

連載:「意思決定」のための学びデザイン

文・イラスト=荒木博行 編集=宇藤智子

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