野球には、「本物の守備の名手にファインプレーは少ない」という格言がある。守備の上手い選手は、他人がファインプレーにするような打球でも、あらかじめ球の飛ぶ方向を予測して、正面で難なく捌いてしまうということだ。
つまり、経営においても、日常的な意思決定を通じ、すでに望むべき方向に舵が切れていれば、経営者はドラマチックな意思決定をしなくなる。
先の見えない世の中において、経営者が行う「ドラマ型意思決定」に、ギャンブル的要素を排除することは不可能だ。だからこそ、丁か半かの勝負はギリギリまで保留し、その前の目立たないステージにおいて、ドラマ型意思決定に陽が当たる回数を減らすための仕組みが必要なのだ。
冒頭のPK戦の話に寄せるならば、立候補制の是非を語ったところで、生産的な議論にはならない。PK戦というギャンブルに入ることを防ぐために、何気ない「日常的」プレー選択において何が変えられたか、を先ずはおさえておく必要があるということだ。
ということで、ここまで「創発回転型意思決定」と「ドラマ型意思決定」という2本の補助線を説明してきた。これらを踏まえて、今後は組織的な意思決定の実例を深めていきたい。
連載:「意思決定」のための学びデザイン