例えば、お客様は目の前の商品について従業員に尋ねるのと同じように、アプリケーションを開いて簡単に情報を得ることができるようになるのです。ARオーバーレイとカメラ技術を統合することで、商品を素早く識別し、情報を提供することができます。
このように、AIを活用したカスタマーサービスを導入することで、顧客満足度をあげるために人による対応が不可欠な、より複雑なカスタマーサポートへと従業員を集中させることができるようになるでしょう。
LincのGen 3 CX Automation(会話型AI)プラットフォームは、バーチャルな顧客サポートサービスを提供
出典:Linc
店内在庫
機会損失防止は、AI技術の応用が期待される重要な分野であり、店舗の在庫切れや欠品を検知・防止することで、小売企業は積極的に行動にうつすことが可能です。AIは、セキュリティシステム(CCTVやアラームを含む)、店内アプリケーション、POSシステムなどのソースから収集した情報を分析することができます。
最近のNRF(全米小売業協会)の調査によると、ブランドや小売企業はすでに機会損失防止にかなりの投資を行っていますが、AIを組み込んだものを含む技術的ソリューションの予算は、警備員や店内機器に関連するものよりも速いペースで増加しています(図2参照)。
図2. 2022年における機会損失防止にかかる予算の優先順位の変化(回答者の割合)
対象:グローバル小売企業63社(2022年9月調査)
出典:NRFの2022年全米小売企業セキュリティ調査
また、店頭在庫管理戦略の一環として、AIを活用したヒートマップ(色を使ってイベントの発生頻度や影響範囲を示すデータのグラフ化)を使って、店頭での買い物客の行動をリアルタイムに把握するケースも増えています。
ヒートマップは、カメラで撮影した映像データをもとに、店内のさまざまなエリアにおける来店者の動きや滞在時間を正確に把握し、店舗レイアウトや在庫配置に最大限反映することで、マーケティングキャンペーンの成功や売上アップにつなげることができます。
すでにヒートマップは一部で活用されていますが、今後はさらに高度化・高精度化し、より詳細な分析が可能になることが期待されます。
小売企業は、競合他社の新戦略や消費者需要の変化に対応するため、市場の変化に応じた迅速な価格調整を行うことで、事業を優位に進めることができます。AIを活用して価格設定を最適化することで、不況時に低迷した売上を伸ばしたり、需要に応じて価格を引き上げて利幅を最大化することもできます。
また、AIが店内の在庫状況を自動監視することで、在庫管理が強化され、在庫補充の判断がしやすくなることも期待されます。
これらの技術の多くは、現在限定的に利用可能ではありますが、店内での完全な自律化のための大規模な統合は、高価で困難なプロセスになる可能性があります。また、テクノロジーはまだ発展途上であり、問題が発生する可能性もあります。
とはいえ、基礎となるAI技術部品は今後10年間で安価になると思われ、開発者は、AI、CV、MLアルゴリズムを店舗に容易に統合できるソリューションを作成し、AIソリューションを活用して在庫と棚割をより適切にコントロールしながら機会損失に対抗する手段を提供することが期待されます。