シェールの開発会社は長年にわたる猛烈な事業拡大の結果、最良のリース契約を使い切ってしまった。そのため、統合によって有望な土地をさらに確保しようとしており、業界には巨額の資金があることから上流の戦略的取引の新たな流れを促進することになりそうだ。
E&P業界にとって、株主への高配当は依然として最優先事項で、来年には400億ドル(約5兆4010億円)が自社株買いを通じて株主に還元されると予想されている。しかし、負債が劇的に減少し、原油価格の高止まりが予想される中、各社は好調を長期的に維持する方法を模索している。上流のM&Aによる優良な土地の拡充は今、非常に理にかなっている。
シェールのトップメーカーは最も生産量の多い地域で地位を確立させ、経営上の優位性を活かして効率性を改善し、最終的には収益を向上させたいと考えている。より慎重な企業は、埋蔵量を拡大するためにバリューチェーンと関わるところに資産を追加するかもしれない。
M&Aを検討しているほとんどの企業は、エネルギー転換と米国のエネルギー政策をめぐる政治的議論を注視している。政策論争を先取りし、価格変動への耐性を高め、温室効果ガスのスコープ1(自社が直接排出するもの)とスコープ2(間接的に排出するもの)を削減するために、現金の蓄えを利用してポートフォリオを再構築したいと考えている。
石油・ガス部門は長年にわたって大きな統合を経験しており、多くの大企業が小さい競合他社を買収している。この傾向は、企業が事業の合理化とコスト削減を目指す中で今後も続くと予想される。損益分岐のコストが低く、さらに排出量が少ないという特徴を持つ資産は非常に需要が高い。「低コスト、低炭素」はこの部門の新しいM&Aキーワードだ。
石油・ガス部門には過去2年間で市場で最も好成績を収めた銘柄がある。2022年に石油大手のExxonMobil(エクソンモービル)は1950億ドル(約26兆3280億円)の収益をあげ、時価総額は4540億ドル(約61兆2970億円)に達した。一方、ハイテク大手Apple(アップル)の同年末の時価総額は846億ドル(約11兆4220億円)以上減って2兆1000億ドル(約283兆円)だった。
石油・ガス部門がテック大手を追い抜くとは誰も言っていない。しかし、金利は上昇し、インフレはまだ続いている。そして投資家が「成長株」よりも高配当の「収入になる株」に目を向けるようになっている今、従来のエネルギー株は非常に魅力的だ。
(forbes.com 原文)