S&P500に採用されている石油・天然ガス企業への投資はこの1年で26%以上増加した。全体の指数が5%下落したにもかかわらずだ。
新型コロナウイルス感染症のパンデミック時にエネルギー需要が激減し、原油価格が一時的にマイナスになるなど、かつて見放されたこの部門はいま目覚ましく好転している。
地政学的な長期供給の混乱と財務の強化によって商品価格が回復したことで、エネルギーは米国の大型優良株で構成されるこの指数の中で最も業績のいい部門となった。
石油需要のピークは2019年だったという悲観的な予測は消え、国際エネルギー機関(IEA)などは現在、消費が2023年過去最高を記録し、今後15年以上にわたり拡大し続けると予測している。
米国の石油・ガス会社は新規株式公開(IPO)に向けて再び列をなしている。これは、過去最多の現金を抱えるこの部門がウォール街の投資家にまたも支持されていることを示す、かつてない明確な兆候だ。
テキサス州に本社を置く石油・ガス生産会社TXO Energy Partners(TXOエナジー・パートナーズ)は1月に、ここ6カ月ほどで株式公開を果たした初のエネルギー企業となった。投資銀行Renaissance Capital(ルネッサンス・キャピタル)によると、この他にもエネルギー企業9社が過去90日間にIPO書類を提出または更新している。
これらの企業がすべて今年中に上場すれば、石油・ガス業界にとってこの6年間でIPOが最も多い年となる。
この業界は資本の厳格運用の強化や原油価格の上昇により、営業費用と設備投資への支出を差し引いたフリーキャッシュフローも過去最多となっており、これにより合併・買収(M&A)への関心が再び高まっている。
コンサル会社McKinsey and Company(マッキンゼー・アンド・カンパニー)の分析によると、石油・ガスの開発・生産(E&P)を行う北米の上位25社の資産は昨年、約850億ドル(約11兆4760億円)だった。これらの企業の昨年末の現金残高は700億〜1000億ドル(約9兆4510億〜13兆5015億円)と推定されている。
この部門のキャッシュフロー創出の取り組みは引き続き活発で、今年は700億〜900億ドル(約9兆4510億〜12兆1510億円)に達し、2027年までは年500億〜700億ドル(約6兆7510億〜9兆4510億円)で推移すると予想されている。米国の原油指標であるWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)の価格が1バレル65ドル(約8775円)に達したとしてもこの傾向はみられるだろう。