CPUは水風呂で冷やす時代へ、空冷はもう限界

Getty image

インターネット上のデータ処理やサービス展開に欠かせないデータセンターですが、その需要の高まりと比例して熱問題が深刻化しています。これまで冷たい風を送って機器の温度を下げる空冷式が主流でしたが、夏の酷暑が続く日本ではもう限界と言われています。そこで今注目されているのが、機器を丸ごと特別な冷却液に浸してしまう液浸式です。
液浸データセンター全景

液浸データセンター全景


液浸式は冷却効率が大変に高く、そのため消費エネルギーも少なくて済み、騒音も少ないといういいことづくめの方式です。KDDIが2024年の商用化を目指して開発中の液浸冷却システムは、このほど行われた実証実験において電力消費量を94パーセントまで削減することに成功しました。

データセンターとは、インターネットサーバーなどのIT機器を運用するための専用施設のことを言います。そこでは大量のサーバーマシンが稼働するため大量の熱が放出されます。ネット利用の急増にともない、世界各地でデータセンターの建設ラッシュが続いていますが、データセンターが放出する熱や、その冷却のための電力需要などによる環境への影響が大きな問題になっています。

KDDIは、三菱重工業、NECネッツエスアイと共同で、2020年から液浸技術の研究開発を行ってきました。そしてこのたびKDDI小山ネットワークセンターで行われた100キロボルトアンペア相当のIT機器を使った実証実験では、一般的なデータセンターの消費電力と比較して電力消費量を94パーセント削減できました。データセンターのエネルギー効率を示すPUE値は1.05を記録しています。

PUE値とは、データセンター全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った、データセンターのエネルギー効率を示す値です。なので、1が理想とされ、数が小さいほど高効率となります。IT機器以外では照明などの設備も含まれますが、冷却に関する電力が大部分を占めます。一般的なデータセンターは2.0程度と言われているので、1.05は非常に高効率です。さらに騒音レベルも、地下鉄の構内ほどの大きな音がする空冷式から約35デシベル軽減され、日常会話レベルとなりました。


現在、世界中の企業がこぞって北欧やアイスランドに大規模データセンターを建設しています。寒冷な地域なら冷却にかかる電力が抑えられるからです。しかしそれが環境破壊を招くとの懸念もあります。液浸冷却方式が普及すれば、データセンターの電力消費量、そして環境へのインパクトは大幅に削減できるでしょう。KDDIでは、2026年までにデータセンターの二酸化炭素排出量を実質ゼロにする目標を立てています。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

ForbesBrandVoice

人気記事