また、これらのリクエストの半数が西ヨーロッパのユーザーからで、フランスからのリクエストが全体の4分の1近くを占め、人口1人当たりの件数はエストニアが最も多かった。
ドイツのユーザーからのリクエストは17万6100件、イギリスからは12万5300件で、それぞれ全体の17%と12%を占めていた。この2国にフランスを加えた3国のリクエスト件数は、2015年から2020年にかけての申請の約半数を占めていた。
欧州委員会が2012年のEUデータ保護規則案で最初に明文化した忘れられる権利のリクエストは、当初は急増したが、2015年以降に減少した。しかし、2020年には30%近く増加して16万件を突破した。キプロスやポルトガルからは2020年に、前年の3倍近い数のリクエストが提出されている。
そして翌年の2021年にはさらに15パーセント上昇し、地域全体で18万5700件という過去最高のリクエスト数を記録したのだ。
2020年に忘れられる権利のリクエストが急増した理由のひとつは、パンデミックにあると考えられている。「日々の活動の多くがオンライン化されたことで、人々のプライバシーへの意識が高まった」と、サーフシャークのプライバシー担当者、ガブリエレ・カヴェッキテは述べている。また、同時にGDPR(General Data Protection Regulation、一般データ保護規則)の施行が加速したことも、リクエストが増えた一因に挙げている。
リクエストの理由は様々で、約半数は分類が難しいが、17%近くが勤務先の住所や連絡先、事業内容などの「職業上のデータ」という項目に分類されている。また、約6%が依頼者の住所などの個人情報で、個人の画像や動画の削除依頼が含まれていた。さらに、10件に1件の割合で、過去の犯罪に関する言及が含まれていた。
忘れられる権利に関する法律は世界中で徐々に浸透しつつあり、EUに続いてインドや韓国、南米の一部の国々もさまざまな形で同様の権利を認める法律を導入している。しかし、この法律はすべての人に歓迎されているわけではない。欧州では保険業界が、リスク算定が困難になるとして、ロビー活動を展開している。
また、物議を醸すリクエストも存在する。例えば、先月末にグーグルは、ダブリンで6つの売春宿を経営していたことを認め、2010年に禁固30カ月の判決を受けた人物からのリクエストを誤って承認していたことを認めている。
「EUや英国、スイスなどの関連地域で忘れられる権利を導入することは、世界のデータプライバシーの保護のための戦いにおいて大きな飛躍となる」とサーフシャークは述べている。しかし、多くの反対派は、忘れられる権利でオンラインコンテンツが削除されることにより、表現の自由を損なう可能性があると主張している。
(forbes.com 原文)