「イルタ(一発)でどんな難関校にも入れてしまう凄腕講師」という意味だ。韓国のSNSをのぞくと、「年収5億ウォン」とか「高級外車を買った」などバブリーな生活を謳歌する「イルタ講師」たちの書き込みが目に留まる。こんな職業が存在すること自体、「何としても良い大学へ」と願う親や子供が数多くいることを物語っている。
また、韓国では「親の責任」が長くついて回る。海外暮らしが長かった60代の元外交官は「米国の場合、親の責任は子供を大学に入れるまで。子供は大学の入学金を自分の責任で支払う。親も気が楽だから、子供を持つことにそれほど抵抗がない。それに比べ、韓国は延々、子供の面倒を見る羽目になる」と語る。
韓国では、子供が結婚する際、親が結婚式や新居の費用まで面倒をみるケースが一般的だ。韓国では長く、共働きが定着している。社会制度の不備を補うため、夫婦が働いている間、双方の親が孫の面倒を見ることも多い。
さらに、「孫を良い大学に入れる条件」として、韓国人が口をそろえるのは「父親の無関心、母親の情報力、祖父母の財力」だ。元外交官も「いつまで立っても、子供の面倒をみる羽目になる。だから、子供を持つことが負担になる」と語る。
韓国のメディアで働く30代の未婚女性は「私もいずれ、結婚することになると思う。でも、背負わなければいけない巨額の教育費や将来への負担を考えると、夫になる人に子供を持ちたいとはとても言えない。こんな熾烈な学歴競争はやめてしまえばよいと思うが、周りをみて、自分の子どもにだけやめさせる勇気がどうしても出てこない」と語る。
厚労行政に詳しい武見敬三参院議員によれば、しばしば、少子化政策が成功した「お手本」とされるフランスに比べ、日本や韓国が置かれた状況は厳しい。武見氏は「少子化対策は最大の高齢化対策だ。しかし、65歳以上の高齢者が全人口に占める割合が7%から14%に増えるのに、フランスの場合は90~100年かかった。少子化対策の準備にかける時間的な余裕があったわけだ。これに対し、日本は22年、韓国も19年しかかからなかった」と語る。
韓国メディアや世論の一部からは、「このままでは国がなくなってしまう」という悲痛な声も漏れ始めている。
過去記事はこちら>>