気候変動対策では、たった一つの解決法が人類を救うことは考えにくい。だが、意外かもしれないが、環状交差点(ラウンドアバウト)は、大気汚染の改善や、炭素排出量削減という点で、想像以上に大きな役割を果たせる可能性がある。
現代的ラウンドアバウトの基準が確立したのは、1960年代の英国だ。私たちがお礼を言うべき(環状交差点が嫌いな人にとっては呪うべき)相手は英国と言えるだろう。環状交差点は現在、米国を含めた多くの国で採用されている。
米ジョージア州にある筆者の自宅周辺では近年、この環状交差点が至るところに設置されている。同州の交通網を計画している人々が、環状交差点を気に入っていることは間違いないだろう。
他の多くの人と同様に、筆者も環状交差点についてはイラつくことがある。合流方法や優先順位を明確に理解できていないドライバーがいるからだ。とはいえ、環状交差点にはメリットがある。保険業界の非営利・独立科学機関で、自動車の衝突安全性などを評価する米国道路安全保険協会(IIHS)はウェブサイトで、そのメリットをいくつか紹介している。
・一時停止の標識や信号の代わりに導入すると、安全性が向上する。
・交通の流れがよくなる。
・自動車が速度を落とすので、歩行者はより安全に道路を横断できる。
複数の研究からは、信号や一時停止の標識が設置されていた場所に環状交差点を導入したところ、負傷者を伴う交通事故の件数が最大で80%減少したことが明らかになっている。
しかし、大気科学専門の研究者である筆者が関心をもったのは、環状交差点の持つ「隠れたメリット」だ。環状交差点を導入すると、交差点における燃料消費や炭素排出量が減り、移動時間が短縮されることが、数々の研究で確認されている。
筆者は研究者としての最初の12年間、米航空宇宙局(NASA)で勤務していたが、炭素排出量や化石燃料の消費量を減らしたほうがいいことは、ロケット科学者でなくても理解できる話だ。