ミュンヘン安全保障会議でのスピーチでソロスは、「太陽地球工学(ソーラー・ジオエンジニアリング)」と呼ばれる、成層圏に火山の噴煙に似た粒子を含むエアロゾルを放出して太陽光を遮り、地球を冷やすテクノロジーの活用を提唱した。
太陽地球工学は、元英国科学顧問でケンブリッジ大学の気候変動修復センター(CCR)創設者であるデビッド・キングが提案した。
しかし、2021年にネイチャーに掲載された論文では、この方法は温暖化を抑制できるかもしれないものの、オゾン層が損傷して気温が劇的に下がり、予測不能な天候パターンを招く恐れがあるとされた。
一方、オックスフォード大学で物理学を教えるレイモンド・ピエールハンバート教授はCNNに対し、エアロゾルは1年以上にわたり大気中にとどまることがないため、継続的な管理が必要になると説明。中断した場合、さらなる気温上昇をもたらす可能性があると述べている。
ソロスはまた、世界銀行に対し、地球温暖化対策への資金援助を増やすよう求めた。世銀のデイビッド・マルパス総裁は、過去に気候変動を否定していると非難されている。
ソロスは、1969年から2011年までニューヨークのヘッジファンド各社を率いて財を成した。フォーブスはその保有資産を67億ドル(約9000億円)と推定している。
先週、科学誌ネイチャー・コミュニケーションズで発表された研究論文によると、世界で1500万人が氷河融解による洪水の脅威にさらされており、その半数以上がインド、パキスタン、ペルー、中国に住んでいる。
国連の報告書によると、地球の気温は人間の活動によって産業革命前から平均1.2度上昇しており、温室効果ガス排出が現在のペースで続くと、この上昇幅は最大2.6度になる可能性があるという。近年注目を集める太陽地球工学は、地球の大気を変化させるため、気候変動対策での最後の手段と考えられている。
(forbes.com 原文)