18人には推定資産額86億ドル(約9800億円)のソロスや彼の息子のほか、投資会社レンコ・グループの創業者で推定資産額37億ドル(約4200億円)のアイラ・レナートらが含まれる。ただ、ソロスはプロパブリカの取材に、自身と息子は小切手を返送したと説明したという。レナートはコメントを拒否している。
小切手は、ドナルド・トランプ政権下の2020年3月に制定されたコロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES法)に基づいて発行されたもの。2019年末時点で世帯所得が15万ドル(約1700万円)未満の夫婦、所得が7万5000ドル(約850万円)未満の独身者が対象者だった。
プロパブリカによると、これらの富豪は事業経費の計上によって課税所得の申告額が低くなっていたため、受給資格者となっていた。レナートや石油業界の大物ティモシー・ヘディントンは、こうした手法によって巨額の収入を相殺した結果、2018年の所得申告額がマイナスになっていたという。
プロパブリカによると、ミシガン州の食品包装容器メーカー、ダート・コンテナのオーナー一族であるロバート・ダートは、米国の納税申告を英領ケイマン諸島からしていたにもかかわらず、小切手を受け取っていた。ロバートを含むダート家の人たちは、税負担を回避するため1990年代半ばに米国の市民権を放棄したことで有名だ。
ダート・コンテナの顧問弁護士はプロパブリカに、ロバートは「自分のような立場の者」はコロナ給付金の受給者であってはならないと考えており、みずからそれを求めたわけでもないと説明。小切手は米財務省に返送したとしている。
米国ではその後、さらに2回現金給付が行われ、ジョー・バイデン大統領が2011年3月に署名した1兆9000億ドル(約220兆円)規模の米国救済計画法に基づく3回目には総額約3900億ドル(約45兆円)が支給されている。現金給付は、政府支援を含めて算出される「補足的貧困率」の改善に大きく寄与し、国勢調査局によると2020年の補足的貧困率は前年の11.8%から9.1%に下がっている。
ただ、米国民のなかには一段の政府支援を求める人たちもいる。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が終わるまで毎月2000ドル(約23万円)の現金給付を続けるよう議会に求めるオンライン請願は、これまでに300万人分近くの署名を集めている。
ワシントン・ポストの7月の報道によれば、パンデミック中の米国民の生活を支えるために連邦政府が行った支援は、累計で少なくとも5兆2000億ドル(約594兆円)に達する。