こうしてつくり上げたDXノウハウを、自動車リサイクル工場管理ソフト「TAPRAS」として販売を始める。その後19年にリリースしたGAPRASでは、契約バイヤーに限らず、海外販路拡大を目指す自動車リサイクル業社が幅広く出品しやすいオークションサイトを目指した。
未来永劫必要とされるリサイクルシステム
TAPRASやGAPRASに携わった開発部は現在6人が所属。14年には、単純作業でありながら従業員の負担が大きかったタイヤホイール脱着作業を自動化する「ロボチェンジャー」を開発した。これまで目視で行っていた残溝やひび割れをカメラやセンサーで計測し、タイヤの品質を5段階で数値化。タイヤ検品作業の効率化に大きく寄与している。ハードとソフトのハイブリッド開発で、車両の付加価値を向上させてきた吉川。その証左に、業績は21、22年と2年連続で過去最高売り上げを更新した。今後は、「GAPRAS」で入札できる対象者を事業者だけでなく個人にも拡大させていく。
日本でもEV化の波が来ているが、吉川はそれによる自動車リユース部品市場縮小への懸念はない。
「EVの電池バッテリーをリサイクルする“仕組み”を提供するだけです。EVの電池バッテリー再利用する際の品質表示や規格が必要になれば、ますます社会にGAPRASが必要になる。EVのバッテリーだけが欲しい人もいれば、タイヤだけを必要とする人もいる。車がこの世にある限り、未来永劫リサイクルとは切り離せない。シーパーツのシステムは、これからもずっと必要とされるものです」
シーパーツ◎1955年創業。2004年に社名をシーパーツに変更。ロボチェンジャーや自動タイヤ品質評価の技術で特許取得し、16年には経済産業省「攻めのIT経営中小企業百選2016」にも選出された。従業員は72人。
吉川日男◎1959年、山口県生まれ。82年吉川商店に入社。88年家業を法人化した吉川メタル工業所の専務取締役に就任。2019年からシーパーツの取締役会長を務める。
『Forbes JAPAN 2023年4月号』では、規模は小さいけれど偉大な企業「スモール・ジャイアンツ」を大特集。受賞7社のインタビュー記事やスノーピーク代表の山井太、経営学者入山章栄ら、有識者によるオピニオンも掲載。世界で勝負する彼らは、どのようにその「強み」を差別化し、武器にして成長してきたのか。独自の方法で可能性を切り拓いた試行錯誤の道のりには、多くのビジネスのヒントが詰まっている。