世界が注目 中古車から最大利益を引き出す衝撃のシステム | シーパーツ

シーパーツ取締役会長・吉川日男。山口工場には、全長110mもある広い工場内には、11台のリフトや750tのプレスシャーリングまでがそろう。中古車の買取から製鋼原料出荷作業までをスムーズに行う機能を完備している。

「当時は、バイヤーの言い値で売買が進む世界。その主導権を私たちが握り、車のパーツをできるだけ高く売るためには『いつ誰がいくらで買うか』という仕入れの元になる数字のデータベース化が必須」と考え、2006年ごろからは自社専用ソフトの開発をスタート。さらに仕入れ・販売金額、部品販売先など車両に関する情報だけでなく、工場内の業務フローの見える化も実現した。

こうしてつくり上げたDXノウハウを、自動車リサイクル工場管理ソフト「TAPRAS」として販売を始める。その後19年にリリースしたGAPRASでは、契約バイヤーに限らず、海外販路拡大を目指す自動車リサイクル業社が幅広く出品しやすいオークションサイトを目指した。
購入者がいない部品や解体された後の車体などのこれ以上使い道がなくなったものは、最終的に同工場内でスクラップとなる。これらの金属も無駄なくリサイクルへ。

購入者がいない部品や解体された後の車体などのこれ以上使い道がなくなったものは、最終的に同工場内でスクラップとなる。これらの金属も無駄なくリサイクルへ。

未来永劫必要とされるリサイクルシステム

TAPRASやGAPRASに携わった開発部は現在6人が所属。14年には、単純作業でありながら従業員の負担が大きかったタイヤホイール脱着作業を自動化する「ロボチェンジャー」を開発した。これまで目視で行っていた残溝やひび割れをカメラやセンサーで計測し、タイヤの品質を5段階で数値化。タイヤ検品作業の効率化に大きく寄与している。

ハードとソフトのハイブリッド開発で、車両の付加価値を向上させてきた吉川。その証左に、業績は21、22年と2年連続で過去最高売り上げを更新した。今後は、「GAPRAS」で入札できる対象者を事業者だけでなく個人にも拡大させていく。

同社が開発したロボチェンジャー。タイヤ脱着の自動化と、残溝やひび割れを計測し、GAPRASに自動登録する。令和4年度中国地方発明表彰中小企業庁長官省を受賞。

同社が開発したロボチェンジャー。タイヤ脱着の自動化と、残溝やひび割れを計測し、GAPRASに自動登録する。令和4年度中国地方発明表彰中小企業庁長官省を受賞。


日本でもEV化の波が来ているが、吉川はそれによる自動車リユース部品市場縮小への懸念はない。

「EVの電池バッテリーをリサイクルする“仕組み”を提供するだけです。EVの電池バッテリー再利用する際の品質表示や規格が必要になれば、ますます社会にGAPRASが必要になる。EVのバッテリーだけが欲しい人もいれば、タイヤだけを必要とする人もいる。車がこの世にある限り、未来永劫リサイクルとは切り離せない。シーパーツのシステムは、これからもずっと必要とされるものです」


シーパーツ◎1955年創業。2004年に社名をシーパーツに変更。ロボチェンジャーや自動タイヤ品質評価の技術で特許取得し、16年には経済産業省「攻めのIT経営中小企業百選2016」にも選出された。従業員は72人。

吉川日男◎1959年、山口県生まれ。82年吉川商店に入社。88年家業を法人化した吉川メタル工業所の専務取締役に就任。2019年からシーパーツの取締役会長を務める。

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文=堤 美佳子 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN 特集◎スモール・ジャイアンツ/日本発ディープテック50社」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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