第4に、アジャイルは1兆ドル(約134兆円)企業の出現を可能にした。2018年より以前のことはもう記憶の彼方かもしれないが、アメリカには時価総額が1兆ドル(約134兆円)を超える企業は存在しなかった。2010年代を通して、多くのアナリストが、果たして1兆ドル超えの企業は生まれるのかどうかと疑問に思っていた。その後2018年8月に、アメリカ初の時価総額1兆ドル企業としてApple(アップル)の台頭を目の当たりにし、その後すぐにMicrosoft(マイクロソフト)、Alphabet(アルファベット)、Amazon(アマゾン)が続いた(Amazonはその後1兆ドル弱に落ち込んでいる)。
第5に、2018年の時点では、人工知能は、その可能性を理解し見出すことのできる人がほとんどいない先の見えない技術だった。それが現在では1億人以上の熱心なユーザーがChatGPTに登録しており、Google(グーグル)の検索を脅かす存在になっている。ChatGPTは2022年11月30日にプロトタイプとして公開され、多くの分野にわたる詳細な応答や明瞭な回答ですぐに注目を集め、数日後には100万人を超えるユーザーを獲得していた。2023年1月、ユーザー数は1億人を超え、これまでで最も急成長したコンシューマー向けアプリケーションとなった。事実の正確さにばらつきがあることが欠点として指摘されているが、詩や音楽を作ったり、複雑な質問に簡潔な文章で答えるなどの能力は、人工知能の可能性に人々の目を向けさせることになった。
第6に、2018年の時点では、アジャイルはまだ主にソフトウェアの世界の出来事だとみなされていた。Tesla(テスラ)は、アジャイル思考が製造業でも同様に有効であることを示した。2018年1月、テスラの時価総額は570億ドル(約7兆6500億円)だったが、今では6590億ドル(約88兆4000億円)と10倍にもなっている。
第7に、2018年当時はビデオ会議は珍しかった。使い勝手が悪く面倒なものだったが、Zoom(ズーム)がそれを簡単にできることを示した。パンデミックの発生によって、ビデオ会議や在宅勤務が一般的になった。Zoomは「Zoomする」という動詞としても使われるようになった。
第8に、アジャイルは、法律事務所など予想外の場所で広がり始めた。伝統的な慣習を重んじ、それを遵守するという意味で本来は保守的な法曹界において、アジャイルな実践が盛んになっている。