働き方

2023.02.13 09:15

若者世代の意識変化、旧産業改革の大きなチャンスに

Getty Images

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現在の経済状況について、刻々と変化するニュースについていくのは大変なことだ。テック企業の人員削減が報じられたかと思えば、それとは逆に米国の雇用統計がプラスに転じたというニュースが流れる状況だ。残念ながら、就職活動をする若い世代にとって、今の環境は比較的不安定に感じられるかもしれない。

ミレニアル世代とZ世代は、ここ数年、考え方や願望に影響を与えるような不安定な状況を経験してきた。ワークライフバランスや目的意識を追求する一方で、不安定な世界での安定を求めているのだ。

Z世代の求職者の多くは、夢の仕事に就くことよりも、安定性を重視している。ニュースサイト「インサイダー」によると、「ネットワーキング・プラットフォームHandshake(ハンドシェイク)は6月、約1400人の大学新卒者と現4年生に、就職活動で何を優先しているか尋ねた。74%が仕事の安定性と答えたのに対し、有名企業や急成長中の業界で働くことが非常に重要だと答えたのは半数以下だった」という。

借金も懸念材料だ。「ニューヨーク連銀によると、米国での直近の四半期のクレジットカード負債額は、過去20年間で最も増加。すべての年齢層で支払遅延が増加したが、増加幅が最大だったのは18~29歳の若者だった」とインサイダーは伝えている。

多くの若者が目指す分野であるテック業界で人員削減が起きると、いくら最新の雇用統計が良かろうとも、再考や混乱を生む。現在の混乱した環境は、それまで魅力がないと思われていた分野にとっては好機であり、安定を求める若者を引き付ける機会として捉える必要がある。

人事サービス企業Insperity(インスペリティ)のコンサルタント、マイケル・ティムズは、若い世代を念頭に置いてビジネスを再構築することは、人材を引き付けるために必要なことかもしれないと指摘している。「ミレニアル世代は労働人口の圧倒的多数を占めつつあり(その割合は2025年までに75%に達する)、Z世代がその後に続いている。この2世代の影響力が合わさることで、職場は劇的に変化していく」

保険などの古い業界は、若い顧客のみならず、若い労働者を引き付けるためのアプローチを再考している。

独立系保険会社HawkTalk(ホークトーク)はこう分析する。「保険業界は現在、深刻な人材不足に直面している。保険業界の専門家の約半数は45歳以上であり、今後数年で労働人口の25%が退職すると予想されている。このため、2020年までに推定40万人のポジションが開かれることになる。ニーズが切迫している一方で、若い人材が自然にこの業界に集まってくるわけでもない。ピュー・リサーチ・センターの調査によると、ミレニアル世代のうち保険業界で働くことに興味を持っているのはわずか4%だ」

関心の薄さは、一見すると障害にも思えるが、保険などの旧産業にとっては大きなチャンスとなる可能性がある。安定を欲するミレニアル世代やZ世代にとって、まさに安定性に関する仕事である生命保険などのサービスは魅力となり得る。インクルージョンや社会の変化に関わることに関心のある若い世代は、個人や家族の生活を守ること重要な条件となるのだ。

アメリカン・インカム生命保険会社(AIL)地域責任者のマーク・ニールソンは、過去10年間に数千万ドル(数十億円)以上の保険を販売してきたトップ営業マンで、業界に新しい風を吹き込んだ若手の代表例だ。ミレニアル世代の彼は、金銭的な動機だけでなく、顧客と従業員により未来志向の安定性を提供したいという願いも仕事の原動力となっている。

「私はこの仕事に情熱を持ち続けた結果として、高収入を得られました。AILは信用組合、労働組合、そして組合員と強く連携しています。労働者階級の家庭を重視していることが、入社の大きな理由です」

最初の数年間は、保険ビジネスの構築に専念していたが、その後の6年は販売に専念した。「その結果、驚異的な売上高を達成し、最終的には社内で世界一位となりました。その後、ディレクターに昇格し、全米の管理職を教育するのが私の仕事になりました」

デロイトの調査によると、ミレニアル世代とZ世代は気候変動、富の不平等、地政学的な不安、そして経済的な安定に関心があり、こうした懸念の中には互いにぶつかり合うものもある。多くの人が、持続的な変化、より高い報酬、柔軟性、健全な生き方を求める一方で、生活費の上昇への対処にも迫られている。

若い世代にとっては、お金のかかる世の中で稼ぎながらも、社会に恩返しをするという二重の目的があるのだ。ニールソンは、その両方が保険業界に存在することを発見した。「退役軍人、看護師、消防士、教師、警察官といった第一線で働く人たち、労働組合員が、死亡や健康、事故の際に保護を受けられるように手助けができます。しかも、それで十分な収入が得られるのです」

若い世代が自分のやりたいことを模索する中、旧式のビジネスモデルを持つ業界は、その形を変え、人材プールを引き付ける格好の機会を得ている。保険などの特定の業界は、柔軟性とワークライフバランスを重視するようになるかもしれない。経済的な成長の可能性、安全性、そして企業として善い行いをするという付加価値を提供できる企業は、若い求職者の関心を集めることができる。

マーク・ニールソンは、答えを求める若い世代の見本となるようなサクセスストーリーだ。ミレニアル世代とZ世代は、テック分野の仕事や自分のキャリア目標を実現できる産業だけに関心があるわけではない。おそらくもっと重要なのは、意義と収入を兼ね備えた組織に興味を持っていることだ。公私での経済的安定を、社会貢献という目標と両立させることは実際に可能なのだ。

forbes.com 原文

翻訳=上西雄太

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