健康

2023.02.23

「ジャンクフード=悪」の発想が解決を妨げる? 米国の肥満危機

Getty Images

途方もないレベルの米国の肥満率は、さまざまな規則の導入につながってきた。砂糖入りの炭酸飲料(ソーダ)に対する課税や、食品パッケージの前面への栄養成分表示の義務化、小売店のレジ前のキャンディー類の陳列禁止といったものだ。

公衆衛生の専門家らはこれまで、カロリーが高く、栄養価が低い(糖分、ナトリウム、飽和脂肪酸の含有量が多い)そのジャンクフードを、対策における標的としてきた。

だが、米ジョージタウン大学マクドノー経営大学院の関連機関、Business for Impact(ビジネス・フォー・インパクト)の報告書によると、その対策において、いわゆる「嗜好品」、あるいは「ジャンクフード」を同一に扱うべきではないという。

報告書によると、過体重や肥満の消費者の多くは、食品のパッケージに記載された栄養成分表示を読んでいない。また、ソーダに課税した場合、予想どおりに売上高は減少したものの、肥満率に大きな変化は起きていない。

求められる「許容可能」なぜいたく

消費者の多くはいま、難しい問題に直面している。新型コロナウイルスのパンデミックを受け、より多くが健康に気を配るようになった一方で、ジャンクフードを購入することが増えたという人も多い。

コンサルティング会社アクセンチュアの調査では、回答者の59%が、「パンデミックが収束した後も健康に配慮して食品を購入する」と回答している。
また、米コンサルティング会社、Natural Marketing Institute(ナチュラル・マーケティング・インスティテュート)の調査によると、消費者の47%が、以前より健康的な食品を多く取るようになっている。ただ、同時に40%が、ジャンクフードを食べることが増えたとしている。

ジャンクフードのほかにも、「コンフォートフード(甘いものや子どものころによく食べたものなど、心を癒すような食べ物)」と呼ばれる食品の購入量も増えている。そして多くは、今後もこうした「ちょっとしたぜいたく」と思える食品を買い続けたいと思っている。

一方、米食品・飲料大手Mondelēz International(モンデリーズ・インターナショナル)が2021年に公表した報告書によると、消費者の85%が1日2回、1回は栄養を取るために(食事代わりとして)、1回は間食として(ちょっとしたぜいたくのために)、スナック類を食べているという。

消費者の間で健康意識とスナック類の需要が同時に高まっていることが示唆するのは、健康的で、食べても罪悪感を持たずに済む、「許される」嗜好品やスナック類の人気は今後も続くということだ。

このトレンドが意味するのは?

これらの調査結果は、公衆衛生の専門家や規制当局には「焦点を変える必要がある」ということを示している。コンフォートフードやジャンクフード、いわゆる嗜好品に分類される食品の摂取を制限または禁止することにおいて、「それ一つですべてに対応」させる考えに基づいた戦略は、あまり効果的ではない。

ソーダ税の考え方に欠けているのは、値上がりしたその商品の代わりに、消費者は何を買うようになるのかという視点だ。代替分析を行わずに、有効な戦略を立てることは難しい。

食品会社は「許されるぜいたく」を求める消費者のニーズに応えるため、製品に関する透明性を高め、より健康に良い製品のための研究開発や1回当たりの摂取量を調整しやすくするための取り組みなどを、より加速させていく必要がある。

forbes.com 原文

編集=木内涼子

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