スタンフォードに新設、サステナ学部が持つ「危なっかしさ」の神髄

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──卒業後はどうされるのでしょうか
 
こちらに来て「脱炭素」の実現は、動かしがたいゴールだと確信しました。日本のエネルギー自給率を考えると、これから真剣な議論が必要になると考えています。しかしながら現在、石炭火力に対して日本は、欧州が主導する再エネ化の流れに同調することを試みています。一方でカーボンキャプチャー技術や高効率石炭火力発電の推進を標榜するなど、苦しい判断を迫られているように感じます。
 
日本の再エネ業界は、生かすも殺すも法制度次第。政策立案側に回ることで貢献できることもあるかもしれません。グローバルな視点と現実的な視点を併せ持って、法制度を立案し未来に貢献する法律実務家として活躍していきたいです。

小柏卓也さん

小柏卓也さん

取材後記

2022年9月に発足したサステナビリティ学部の正式名称は「Doerr School of Sustainability」。スタンフォード史上最高の10億ドル(約1300億円)を寄付した著名VCであるジョン・ドーア氏の名前を冠した学部です。
 
70年ぶりの新学部とあって、多くのセミナーが行われ、キャンパスでは「サステナビリティ」の大きなうねりが感じられます。そんな中で、授業ではいったい何が起こっているのか?
 
小柏さんからは「正直ひいてしまうほどの熱気」であり、「世界中から集まった頭のいい人たちが、あぶなっかしいことに全振りしているように見えて不思議」というお話がありました。

そしてその背景や真意を議論するうちに、出てきた答えが「未来の何かを変えようとすると、細かい議論は無限にある。だからこそ細かい議論を振り落としてでも、大きなテーマを掲げて前に進もうとしているのでは」ということでした。
 
スタンフォードは、未来を変えるリーダーを育成する大学です。こうして未来創りに強くコミットする文化や姿勢があって、ここから、既存産業を破壊し世界を変えるようなテック系ベンチャーが次々と生まれたのでしょう。小柏先生との対話からそんなダイナミックなスタンフォードのメカニズムが見えてきました。

※この記事はジャーナリスト尾川真一(フルブライト奨学生)とともに取材しました。


小柏卓也(こがしわ・たくや)◎東京大学法学部・大学院卒業 2016年長島・大野・常松法律事務所。2022年スタンフォード大学法科大学院に進学。

文=芦澤美智子、尾川真一 編集=露原直人

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