ビジネス

2023.02.08 08:00

ChatGPTの生みの親、サム・アルトマンが語る「AIと検索と資本主義の未来」

──グレッグは、ファーストパーティ製品(エンタープライズツールなど)と並んで、サードパーティAPIの未来について話してくれました。プロダクト化にするにあたって、OpenAIのオープンな精神をどのように維持するのでしょうか?

最も重要なのは、ChatGPTのようなオープンなツールを提供することだと思います。グーグルは、こういったものを一般向けには公開しません。他のラボも、安全性を懸念する人たちがいるため公開しないのです。しかし、私は、社会がこれを感じ取り、格闘し、プラスやマイナス面を理解することが必要だと考えています。ですから、私たちが行う最も重要なことは、これらのツールを公開し、世界がこれから起こることを理解できるようにすることだと思います。

私がOpenAIを誇りに思っていることの1つは、AGIの「オヴァートンの窓(多くの人に尊重すべきのものとして受け入れられる政治的な考え方の範囲)」を、健全だと思えるやり方で押し広げることができたということです。時に不快な印象を与えたとしても。

その上で、さらに強力なAPIを提供したいと考えています。2021年にリリースした画像認識モデルのCLIPをオープンソース化したように、今後もオープンソースを続けていきます。画像生成ブームのきっかけとなったのは、まさにオープンソースです。最近も、音声認識AIの「Whisper」とニューラルネットワーク向けプログラミング言語の「Triton」オープンソース化しました。

──あなたがサティア・ナデラCEOやマイクロソフトに肩入れしているのではと心配する人たちに、どのような言葉をかけますか?

私たちは、自分たちの使命を果たせるように、彼らとの取引を慎重に組み立ててきました。サティアとマイクロソフトはすばらしい存在で、私たちの価値観と最も合致しているテクノロジー企業だと思います。マイクロソフトとの提携にあたっては、リターンに上限を設けたり、セーフティ・オーバーライド条項を設けるなど、通常の会社なら嫌がるような取り決めを行ったのですが、彼らは「それはすばらしい」と言ってくれています。

──では、営利企業としてのOpenAIのビジネス上のプレッシャーが、会社全体のミッションと対立することはないとお考えですか?

まったくありません。私は、我慢したくないことは我慢しないということで、よく知られています。そう思っていたら、契約はしていません。

──ChatGPT の活用法として、これまでで最もクールだと思ったものは何ですか? また、最も恐ろしいと思った活用法は?

私が個人的に最も役に立ったと思うものを挙げるとすれば、それは「要約」です。記事全体や長いメールを要約できることは、想像以上に便利です。また、難解なプログラミングの質問をしたり、コードのデバッグを手伝ってもらう際には、非常に優秀なプログラマーに話を聞いてもらっているような感覚を味わえます。

一方で、怖いものに関していうと、オープンソースの画像生成ツールを用いたリベンジポルノの発生をとても心配しながら見ています。これは巨大で予測可能な害をもたらすと思います。

──このようなツールの背後にいる企業は、そのようなことが起こらないようにする責任があると考えますか? それとも、人間の性質として避けられないものなのでしょうか?

その両方だと思います。どこを規制するかという問題もあると思います。特定の企業を指差して「おい、こんなことはするな」と言えるとしたらいいのですが、人々はそれとは関係なくオープンソースモデルを使うでしょうし、その結果、悪いことも起こるでしょう。そして、エンドユーザーと最終的なつながりを持つ企業も、何らかの責任を負わなければならないでしょう。そこで、共同責任や説明責任が問われることになるでしょう。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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