ソニーが絶好調でも経営体制を見直すワケ

吉田憲一郎(左)と十時裕樹(右)

不安定な事業環境で経営判断の速度を上げる

ソニーグループは積極的な投資、買収戦略を推し進めつつも、過去最高益となった昨期の利益水準を維持しているが、一方で経営環境は不安定さを増している。世界的に地政学的リスクが高まり、新たな技術イノベーションの萌芽も見え始めている。

「本年度は過去最高の売り上げを記録している。通期では1兆円を超える営業利益を見込んでいる。しかしながら、世界の状況は不確実性が極めて高い、AIの進化など急速な技術進化の中で、ソニーグループの大きく価値が減退する可能性もある」とした上で、不確実な時代に生き残り、さらに成長を目指すために「人材登用、事業投資ともに多様性をさらに推し進めるべきだ」と十時氏は話す。

吉田氏が推し進めてきたパーパス経営では、ソニーの役割を強く定義する一方で事業領域は幅を広く取ってきた。今後、さらに事業領域は拡大していくだろう。

「事業ポートフォリオは動的なもの。経営環境の変化に応じて常に変化するものだ。そして事業が多様になれば、それぞれに異なるハーベストサイクルが生まれる。各事業を個別に理解・俯瞰して、投資と資金回収の経営を行わねばならず、またその判断のスピードも上げていかなければならない(十時氏)」

業務執行そのものは、各事業会社が進めていくものだが、それをまとめるソニーグループのCOOとして、全事業会社の業務執行に携わることで、CFOとして経営資源を異なるハーベストサイクルで判断していく。

十時氏の役割は極めて重要となるだろうが、一方で多様性に対応しつつも、素早い経営判断を行うために前向きな経営体制の刷新だとも評価できる。
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