経営・戦略

2023.02.04 16:00

AI通訳ポケトークが描く米国戦略 「アポは必ず相手オフィスに行け」 #4

露原直人

ポケトーク代表取締役社長の松田憲幸

「言葉の壁をなくす」をミッションに掲げ、AI通訳機『POCKETALK』シリーズを販売するポケトーク。2022年11月にはDIMENSIONを含め16億円の資金調達も実施し、世界的に躍進を続けている。同社代表取締役社長 兼 CEO松田憲幸(まつだのりゆき)氏に起業家の素養、事業成長の心得などについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全4話中4話)

第一話:スティーブ・ジョブズも実践した、経営者の危機の乗り越え方
第二話:AI翻訳などヒット連発 ポケトークCEOがユーザー目線でいられる理由
第三話:8年間、社員全員に手紙を書き続けた ポケトークの組織づくり


日本語が話せない人をリーダーに据える

──シリコンバレーに10年以上住まれ、アメリカでの事業展開も本格化されています。海外で事業展開していく上での組織構築の勘所を教えてください。

僕はアメリカで事業をやるためには、アメリカ人に任せるのが大原則だと思っています。

日本の企業の場合、アメリカのヘッドが日本人ということが多いと思うのですが、それでは難しい。アメリカ人がアメリカ人をマネジメントできる組織にしないといけません。

──どのような方を現地のリーダーに選ばれていますか?

あえて一つ言うと「日本語が話せない人」です。

日本語が話せるという事は日本に滞在したことがあったりする方だと思うのですが、これって、もちろん一部の例外を除きますが、アメリカの一流人材の主流からは大きく外れていると思うのです。

アメリカのビジネスを知り尽くしている事が一番重要だとしたときに、一流人材は日本語を勉強するくらいならもっと他の勉強をしているでしょっていう。

あえて強烈な例えとして挙げましたが、それくらいの自国認識を持たないとアメリカでは戦えません。

アメリカでは“No. 1”が通用しない

──アメリカでのマーケティングにおいて、日本と異なる部分はどんな点でしょうか?

日本は有名になろうと思ったら、テレビCMをバンバン打てばいいといったような法則があります。どんな無名な会社でも、100億円あれば有名になれる。

でもアメリカだと、100億円あったら有名になれるかというと、なれるとは限りません。

テレビCMといってもアメリカの全局は買えないし、メディアも多岐に渡っていて「ここ打てば絶対有名になる」という法則が無いのです。

もう一つ大きく異なるのは、広告を信じるか否かの感覚。

例えば日本人は広告を信じやすいのでよく「No. 1」という表現を使うと思うのですが、アメリカ人は「No. 1」って書いてあると怪しいと思うらしいです。

これは日本とアメリカの文化の違いだと思うのですが、総じて一般的に言われるマス広告が効きにくいのがアメリカです。

なのでアメリカではPRファームとの地道なリレーションから、うまく伸ばせる施策を見つけていくことが重要です。ニュートラルな媒体に褒めてもらって納得性を高めていく。

日本のような狭い国土の国ではPRよりもCMのようなマス広告の方が即効性はよいので選ばれがちですが、そこの感覚値はアメリカとは大きく異なるように思います。
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文=伊藤紀行 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc. 編集=露原直人

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