宇宙

2023.02.04

『スタートレック』が実現する前に、まず地球を守らなければならない

1972年4月、アボロ16号から見た地球(Getty Images)

2021年10月、ジェフ・ベゾス率いるBlue Origin(ブルー・オリジン)の宇宙旅行カプセルから降り立った俳優のウィリアム・シャトナーは、すぐに「概観効果」を経験した。地球の美しい生物圏が歓迎されない暗黒の宇宙と隣合わせになることの脆弱さと驚嘆に対する畏怖の念だ。彼による飛行後の説明も私の琴線に触れた。

30年近く宇宙と天文を扱ってきた者の1人として、人類の起源と存在に関する多くの哲学的質問への答えがそこにあるように思える。それは、私たち人間はまだ、シャトナーの分身ともいえる『スタートレック』の「ジェームズ・T・カーク船長」が私たちに信じ込ませてきたかもしれないかたちで、宇宙に属してはいないということだ。

低地球軌道を民間宇宙飛行士に解放する役目を果たす大富豪たちが、私たちを月の向こうへ連れて行くために必要なものとは別の階層で動いているのは皮肉なことだ。地球は太陽系の中でも、天の川銀河のこの部分の中でも稀な存在であるようだ。地球のような惑星がどんな頻度で進化するのかをいうにはまだ早すぎるが、あまり頻繁に起きることではなさそうだ。

しかし、太陽系を植民地化し、Earth 2.0(第2の地球)を目指して冒険の旅に出る前に、私たちはまず、自分たちが地球に作り出してきた無秩序を一掃する必要がある。

1人の指導者や1つの集団だけで、この地球という驚異の天体(45億年にわたる壮観な宇宙の進化の産物)を脅かすことができるというその概念だけでも、全人類の魂に火をつけるのに十分なはずだ。

以前にも指摘したことだが、限定された地域の核戦争であっても全世界に壊滅的な打撃を与えることを、2014年にEarth's Futureに掲載された論文の大気・気象モデルは説明している。15キロトンの弾頭100発の撃ち合いが起きれば、地球大気を保護しているオゾン層の大部分を一時的に破壊するだけの黒色炭素が放出される。



だから、私にとっては核による最終大戦争の方が、気まぐれな気候変動や壊滅的小惑星衝突よりも恐ろしい。しかし、この3つすべてを抑制する必要がある。そのためには、地政学的外交戦略と地球の気候と天然資源をどう扱っていくかについて膨大な変更が必要になる。

地球近傍天体が衝突する脅威は?

NASAが最近成功した小惑星の方向を変えるデモンストレーションミッションである二重小惑星方向転換試験(DART)で使われたテクノロジーは、予期せぬ衝突体から地球を守るために役立つだろう。
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翻訳=高橋信夫

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