宇宙

2023.02.04

『スタートレック』が実現する前に、まず地球を守らなければならない

1972年4月、アボロ16号から見た地球(Getty Images)

地球でやるべきことはまだあるが、仮想宇宙探査が地球や太陽系そして宇宙で、人類がどんな立場にあるかの理解を深めることを忘れてはならない。それはさらに若者たちが物理学や天文学、宇宙生物学、ロケット科学を学び、いつか私たちを彼方の星へと連れて行ってくれるきっかけになるだろう。

しかし、太陽系外への旅行時間を十分短くできるだけの物理法則を曲げる推進技術ブレークスルーの研究には、十分な努力がなされていない。現段階でその種の研究に必要なのは、基本的に机上のテクノロジーと無限のコーヒーだけだ。それはいつの日か人類を救うかもしれないテクノロジーとしては安い買い物だ。

しかし、シャトナーも正しい。人類に必要なものはすべてここ地球にある。宇宙をさまよいたい願望は、もう少し待たなくてはならないかもしれない。今のところ、世界を離れる方法の選択肢はほとんどない。


NASAが提供したこの画像には、2011年7月12日に国際宇宙ステーション(ISS)から地球の地平線と月が見えているところが写っている。国際宇宙ステーションへの12日間の飛行の最後に、供給物資と予備部品を載せた多目的輸送モジュール、ラファエロを届けた。これは1981年4月12日にコロンビア号の打ち上げで始まったスペースシャトルプログラムの最終ミッションだった(NASA)

月は死に体であり、せいぜい20年のうちに風変わりな科学ステーションと冒険旅行の呼び物になるくらいだろう。火星は砂漠であり、複雑系生命を宿したことはおそらくない。そして金星は、不可解なほどの高温と高圧下にある完全な地獄だ。それらは、地球の天然資源を賢く利用して、未来の世代が原生林を歩き回り、海で泳げるようにすべきである十分な理由だ。

宇宙の仮想体験に集中できるのはそれからだ。そこではおそらくほとんどの人たちが予測できる未来を体験できるようになるだろう。私たちの遠い子孫がスタートレックのような生活を送ることはできるかもしれない。しかし、星間旅行が人類の運命であるなると誰も断言できない。アポロとともに育ってきた世代にとっては確かに残念なことかもしれない。しかし、推進技術へのアプローチに劇的な変化が起きないかぎり、私たちは足元の地球に感謝すべきことを学ばなくてはならないだろう。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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