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2023.02.07

「食べチョク」秋元里奈が見据える日本の農業の未来|クレイ勇輝

「小さくても偉大」な企業、「スモール・ジャイアンツ」は日本中に数多く存在する。そうした企業はいかにして地域に溶け込み、ムーブメントを起こしているのだろうか。この連載では、実業家のクレイ勇輝が全国各地の経営者やリーダーに話を聞きながら、小さくても強い企業の秘密を解き明かしていく。
第4回目のゲストに迎えたのは、食べチョク代表の秋元里奈。全国の生産者から食材や花などを直接購入できるオンライン直売所『食べチョク』の開発・運営を行う、若き経営者だ。自身の実家のような小中規模でもこだわりを持った生産者が持続的に経営していくことができる世界にしたいという思いから始めた彼女の活動には、「農業人口の減少」「関係人口の創出」といった社会の課題を解決する可能性が詰まっている。彼女はいま、どんなことに問題意識を感じ、どう将来を見据えているのか。クレイ勇輝が話を聴いた。



クレイ勇輝(以下、クレイ):秋元さんとは数年前から面識があり、本当に色々なことを深く考えているなという印象をもっていました。あらためて、事業内容について教えていただけますか。

秋元 里奈(以下、秋元):「食べチョク」は、全国の⽣産者から直接⾷材などを購⼊できる産直通販サイトです。地域の生産者と都市部に住んでいる消費者をつなぐことを目的に、2017年にスタートしました。さらに、2022年10月には「お得意さま機能」を開始し、生産者と消費者の関係をより深くするための取り組みを始めました。

「お得意さま機能」は、同一生産者の商品を3回購入してレビュー投稿し、さらに生産者をフォローすると「お得意さま」に認定される、という機能です。「お得意さま」に認定されると生産者さんから感謝のメッセージを受け取れたり、限定商品を購入できたりします。
これらの事業の根底にあるのは、農業をはじめとする一次産業を盛り上げていきたい、という思いです。消費者と生産者とのあいだに直接的なつながりが生まれることで食べものに愛着が生まれ、食卓がより楽しくなるように。そんな願いを込めています。

今後は、オンラインでの売買だけでなく、消費者が実際に生産者に会いに行き収穫を手伝うなど、さらに関係が深まっていくようなサービスを構築していきたいと考えています。

秋元里奈(あきもと・りな) 1991年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業。DeNAにてwebサービスのディレクター、新規事業の立ち上げ、スマホアプリのマーケティング責任者などを経験。2016年にビビッドガーデンを創業、2017年に一次産業の生産者が、消費者に直接商品を販売できる産直通販サイト「食べチョク」を立ち上げた。秋元里奈(あきもと・りな) 1991年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業。DeNAにてwebサービスのディレクター、新規事業の立ち上げ、スマホアプリのマーケティング責任者などを経験。2016年にビビッドガーデンを創業、2017年に一次産業の生産者が、消費者に直接商品を販売できる産直通販サイト「食べチョク」を立ち上げた。

クレイ:秋元さんは農業以外の業界への就職を経て起業されていますが、今の事業を始めたきっかけは何だったのですか。

秋元:実家はもともと神奈川県相模原市で農業をしていたのですが、私が中学生のときに廃業してしまったんです。当時はそこまで重く考えておらず、大学卒業後も農業とはまったく別の業界のDeNAに就職しました。ところが、ある日ふと実家に戻ったときに、昔は美しかった畑が耕作放棄地になっている現実を目の当たりにして、ショックを受けたんです。

思い返せば、子どもの頃は、実家が農家ということが自慢でした。畑の風景も大好きだった。自分が大切に思っていた畑が物理的になくなってしまってい、とても悲しくなりました。この体験がきっかけとなり、農業の現状について調べていくうちに、全国で同じような出来事がたくさん起きていることを知りました。そこで、自分がこの領域で事業を起こして、全国の生産者さんが持続可能になる環境を作っていきたいと思ったのが始まりです。

クレイ:そうだったんですね。個人の体験から社会課題にまで視野を広げて起業した、というところが非常に興味深いです。 
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text by Ayano Yoshida

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