モビリティ

2025.05.20 11:30

テスラのロボタクシー、実は従業員が「遠隔操作」か マスクの夢の実現は?

Dmitriy Sinchenko / Shutterstock.com

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モルガン・スタンレーのアナリストのアダム・ジョナスによると、テスラが6月にテキサス州オースティンで立ち上げを予定するロボタクシーのパイロット版は、「招待制」で実施予定という。最近開かれたテスラの投資家向け会合でこの情報を入手したというジョナスによると、同社は「失敗は許されない」と述べており、安全確保のため多数の遠隔操作要員(テレオペレーター)を現地に配置する計画だ。

ジョナスはまた、イーロン・マスクが4月22日の決算発表で、この実証運用を「10〜20台の車両で開始する」と述べたことにも触れている。

マスクはこれまで、ロボタクシーの立ち上げが「人間による監視を受けない形」で実施されると繰り返し述べていた。そのため、これらの車両が実際には遠隔で監視され、リモートで操縦されるのであれば、このローンチは、以前の主張よりも大幅に見劣りするものになる可能性がある。

本当に実現できるのか、疑問視する声

また、テスラが6月に予定する立ち上げを、本当に実現できるのかを疑問視する声が高まっている。これまでのところ、オースティンで無人の自動運転を実施しているテスラ車は目撃されていない。

ロボタクシー分野でテスラの先を行くウェイモの場合は、2017年4月にセーフティドライバー付きの公開テストを初めて実施し、同年11月に乗客を乗せない無人のオペレーションに移行した。また、無人の自動運転車を使ったタクシー配車サービスを一般向けに開始した時期は2020年10月だった。

テスラは、ウェイモよりも慎重でないことで知られるが、それでもウェイモが3年間を費やしたプロセスを1カ月足らずで実現しようとするのは大胆すぎると考えられる。

GM傘下のクルーズやウェイモは、長期間にわたるセーフティドライバー付きのテストを経て、完全無人運転に移行したが、それでも多くの問題に直面していた。例えば、緊急車両に遭遇した場合や、予測不能な道路状況が発生した場合は、ソフトウェアが対応できないケースがあった。

そのため、この分野のすべての企業は、(公にはしないものの)セーフティドライバーが同乗しないオペレーションの開始にあたっては、常に遠隔での監視体制を敷いていたと考えられている。ただし、多くの企業は人間がリモートで運転操作を行うのではなく、「緊急停止」ボタンを押したり、車両を複雑な状況から脱出させるための「戦略的な指示」を与えるのみだった。

しかしテスラに関しては、リモートのオペレーターが指示を出すのみではなく、直接的に運転に介入するのではないかという見方が上がっている。モルガン・スタンレーのジョナスは、テスラが「多数の遠隔のオペレーター」を安全確保のために配置すると述べており、ウェイモのような「アドバイスを与えるのみ」の運用とは異なる可能性がある。ただし、リモートの運転には、通信の確保が重要で、通信障害が続く場合は、安全な場所に停車する必要がある。

そのため、テスラがオースティンでのイベントを、10〜20台の車両に限定した「招待制」とするのは、理にかなったことだと考えられる。また同社は、クルーズやウェイモの初期と同様に、試乗者にNDA(秘密保持契約)を求める可能性もある。一方で、共和党が優勢なテキサス州の州都でありながら、リベラル色の強いオースティンでは、マスクへの反発も予想されている。

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編集=上田裕資

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