まだ少数派ではあるものの、顧客体験や業務の一環としてAIを取り入れる金融サービスの経営者が増えている。2022年3月にEconomist Impact(エコノミスト・インパクト)とSASが500人の経営者に対して実施した調査の回答では、活用すべき最も重要な技術の1つとして約半数(48%)が高度なデータ分析を挙げ、34%がAIと機械学習(ML)を未来への道筋だと答えている。
同様に、Deloitte AI Institute(デロイトAIインスティテュート)の調査では、金融サービスの経営者の32%が組織でAIを使用していると回答している。調査記事の著者は「AIが金融サービスの未来であることは否定できない」と述べ「多くのフィンテックがAIを導入している一方で、金融サービス業界自身へのAI導入はまだ初期段階なのだ」という。
AIやMLの導入は非常に複雑であり、多くの金融サービス企業は、これらのアプローチのどこに、どのように投資すべきかをまだ見極められていないのが現状だ。Microsoft(マイクロソフト)、Amazon(アマゾン)、Intel(インテル)、HP(ヒューレット・パッカード)、その他のテクノロジー企業の従業員に対するサービスを提供するFirst Tech Federal Credit Union(ファーストテック信用組合)の最高デジタル責任者マイケル・アプトンは「AIとMLにはまだまだ試行錯誤の余地があります」という。しかし、これらのテクノロジーは、一度導入されてしまえば、新興のデジタル企業において重要な役割を果たすことになる。アプトンは「COVID(新型コロナウイルス感染症)はデジタル化を真に加速させ、業界は戦術的、取引的な観点から顧客のニーズにうまく対応しました。しかし、業界全体としては、特にデジタルチャネルを通じてのエンゲージメント、ぬくもり、きめ細かさに欠けていたと思います。デジタルに人間らしさを再び取り入れる必要があり、AIはそのためのツールなのです。対面での接客と組み合わせることで、AIはよりパーソナライズされた、より適切な、お客様がその瞬間に必要としているものに沿ったサービスを提供するのに役立ちます」という。
First Tech Federalは、自社のAIへの取り組み拡大の主な目的は、顧客とのやり取りやサービスを大幅にパーソナライズすることだと考えている。アプトンは「AIやMLを使うことで、どのようなタイミングでも会員1人1人のニーズを満たせるような、最適なポジションをとれると考えています」という。「私たちは、会員がどのようなタイミングでアクセスしてきても、そのニーズに対して適切な対応をとれる存在で有りたいと望んでいます。私たちはそれを、セールス、サービス、リテンションすべてにわたる適切なエンゲージメントを提供するためのパーソナライゼーションのために活用したいと考えています」