AI戦争に出遅れで「非常事態」を宣言したグーグルの社内事情

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グーグルの共同創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、同社の日常的な業務からは退いているが、チャットボットの「ChatGPT」の登場により、その状況が一変した模様だ。

ニューヨーク・タイムズ(NYT)は1月20日の記事でグーグルが、昨年11月末にリリースされたばかりのChatGPTが、同社に深刻な打撃を与えかねないと判断したと報じている。「グーグルにとってこの状況は、火災報知器のボタンを押すような事態だ。同社のビジネスを根底から覆しかねない巨大な技術革新が近づいている」と同紙は書いている。

グーグルのCEOのサンダー・ピチャイは、ChatGPTの登場を受けてコードレッド(非常事態宣言)を発動し、ペイジとブリンを呼び寄せて会議を行い、幹部らに人工知能(AI)分野への対応を優先することの必要性を訴えたという。グーグルはまた、「今年中に20以上の新製品を発表し、チャットボット機能を備えた検索エンジンのデモを行おうとしている」と、NYTは報じている。

グーグルは、以前からAIの重要性を認識しており、約9年前に英国を拠点とするAI研究所の「ディープマインド」を買収した。同社はまた、画像の生成やアプリの開発を支援する複数のAIプログラムの立ち上げを計画しているとされる。

しかし、ChatGPTの突然の大成功が、すべてを変えてしまった模様だ。グーグルは、昨年6月に「LaMDA(ラムダ)」と呼ばれる非常に高度なチャットボットを発表したが、その開発主任のブレイク・ルモワンは、「AIに意志が芽生えた」と発言して物議を醸し、グーグルを解雇された。

一方、ディープマインドは「Sparrow」と呼ばれるチャットボットのベータ版のリリースを予定しているが、同社はこのチャットボットが「事実を取り違えたり、テーマから外れた答えを出したりするような間違いを犯す可能性がある」と警告している。

この状況は、間違いなくグーグルにとっての窮地といえる。優れたチャットボットは、検索エンジンの必要をなくし、グーグルのビジネスモデルを破壊する可能性がある。これを受け、ピチャイはAI開発を迅速に進めるために、プロダクトの承認プロセスを加速させようとしている模様だ。

グーグルが5月に開催する開発者会議「Google I/O」では、同社がAI分野で新たなリーダーシップを発揮するためのプロダクトが発表されるのではないかとの期待が高まっている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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