米戦車メーカーのGeneral Dynamics Land Systems(ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ、GDLS)は戦車からウランを取り除き、タングステンと交換する必要がある。どちらの金属も問題になる可能性がある。
GDLSがオハイオ州リマにある政府所有の戦車工場でM1A2を製造するのに6カ月かかる。「新しい」戦車は1週間に3両しか生産できない。戦車のベースには、米陸軍の兵器庫に眠っている数千台の余剰のM-1を使う。これらの装甲には劣化ウランのメッシュが使われている。
劣化ウランは原子力産業の副産物だ。米国では劣化ウランはエネルギー省の管轄下にあり、輸出規制の対象となっている。
だが、輸出禁止が必要だと誰もが考えているわけではない。米会計検査院は1986年にこの規制を疑問視した。「エネルギー省は確立された核不拡散の目標を達成しつつ、柔軟な対応を可能にするより客観的な基準を定めることができるはずだ」と力説した。
この輸出をめぐる規則が変わらない限り、米政府がM-1を外国に売却したり、供与したりするにはM-1から劣化ウランを取り除いて何か別のものに代えなければならない。
その別のものとはタングステンだ。タングステンは非常に硬い金属で、米国の戦車輸出の鍵を握っている。米国が同盟国にM-1を売るとき(イラク、サウジアラビア、オーストラリア、台湾、ポーランドなどが最近の顧客だ)、GDLSにだけM-1の砲塔の前面と一部のモデルでは車体前面の鋼鉄製の「ポケット」にタングステンを詰める費用を支払っている。
この作業には時間がかかる。GDLSだけがこれを請け負っているため仕方がない。「GDLSは現在、主力戦車エイブラムスに機密扱いの装甲を取り付けるのに必要な安全な装甲施設と生産設備を持つ唯一の請負業者だ」と米政府はこのほど同社への単独委託を正当化した。
タングステン装甲のM-1がウラン装甲のM-1よりも敵の砲火に対して著しく脆弱かどうかは不明だ。
どちらの金属も非常に密度が高い。鉄の密度は1立方センチメートルあたり約8グラム。ウランとタングステンはともに同19グラムもある。
だからといってウランやタングステンで戦車全体を覆うことはできない。というのも、まずどちらの金属も入手が難しいからだ。劣化ウランは核の副産物だ。一方、タングステンは極めて少数の鉱山からしか産出されず、そうした鉱山の多くは中国にある。
また、劣化ウランは特定の条件下で燃焼する傾向があり、放射性物質と毒性が強いため、燃えたときの安全性に問題がある。
一方、タングステンは密度は高いがもろい。衝撃で砕けやすい。1960年に米国防総省がタングステン製の外装を調査したが、結果は失望的なものだった。「硬い(タングステン)面の使用は装甲の防御力の改善に役立ちそうにない」とテスト担当者は報告した。
装甲メーカーが劣化ウランとタングステンをセラミックと鋼鉄も含むケーキ状の複合装甲に混ぜ、鋼鉄を外側にする傾向があるのには理由がある。ウクライナに供与するM-1は米国が他国に輸出したM-1と同様、タングステンを複合装甲に採用したものとなる。
このM-1には仲間がいる。ドイツ、ポーランド、ノルウェー、カナダなどがウクライナに供与を約束したドイツ製戦車レオパルト2の少なくとも一部は装甲にタングステンを使用している。
(forbes.com 原文)