宇宙

2023.02.06 18:00

842年前カシオペア座の中に現れてすぐ消えた「ゾンビ星」を発見

一風変わった花火のようなPa 30星雲は、死んでいく星同士が合体した結果かもしれない(ROBERT FESEN)

晴れた夜に北の空を見上げると、有名なW型の星座、カシオペアが見える。一度この見慣れた形に並ぶ明るい5つ星を見たら、二度と見逃すことはないだろう。それは見つけやすいからだけではなく、カシオペア座が北極星を周回する「周極星座」であり、北半球の夜空にほぼ常に見えているからだ。もしそこに6番目の明るい星が突如現れたら、あなたも世界中の天文家たちも気づくはずだ。

1181年に起きたことはまさにそれだった。中国と日本の天文学者チームが、カシオペア座の中にいわゆる「客星(guest star)」が185日間現れその後、永遠に消え去ったことを記録している。「その客星は非常に明るかったため、中国では数日以内に3つのグループが別々に観測し、日本でも観測されました」と、ニューハンプシャー州ハノーバーのダートマス大学物理学・天文学教授で、近くAstrophysical Journal Lettersに掲載される論文の主著者であるロバート・フィーゼンはいう。「古代人のテレビは『空』だったので、天に突然明るい星が現れたら見つけるのは簡単で、当然記録に残したのでしょう」

あれはなんだったのか? ほぼ間違いなく超新星だ。星が爆発したり2つの星が衝突することによって起こる現象で、観測されることは極めて珍しい。事実、人類の歴史上、そのような客星はわずか9回しか観測されておらず、そのほとんどが古代の出来事だ。

そんな842年前の客星の正体がついに突き止められたようだ。先に行われた米国天文学会第241回例会で、フィーゼンが発表した新しい望遠鏡画像には、Pa 30と呼ばれる天体の中心にある実に奇妙な星から花火のような線状の光が放たれているところが写っている。そのPa 30は、そうカシオペア座の中にある。 


1181年、Pa 30はカシオペア座の「客星」として明るく輝き燃え尽きた(Getty Images)

「天の川銀河の中でこんな天体や超新星のレムナント(残骸)を見たことは、私も同僚たちもありませんでした」とフィーゼンはいう。「古代の天文学者たちには、その新星が地球から見える5番目に明るい星であるベガと同じかもっと明るく見えたことでしょう」

Pa 30は星雲であり、10年ほど前から知られている。2013年にアマチュア天文家で共同著者のダナ・パチックが最初に発見したが、撮影したのは1度だけで非常に微かで散乱した天体として写っていた。そこは発光するガスや塵などの物質が密集する領域だ。本研究によって、Pa 30が1181年に観測された超新星の源であることが確認された。

現在、時速約386万kmで膨張していることから、研究者らは宇宙時計を巻き戻すことで、元の星が爆発したのが12世紀だったことを確認できた。「最新の観測によって、この天体の膨張年齢が約850年であることを、より正確に推測できました。これは1181年の客星のレムナントであることを示す完璧な証拠です」とフィーゼンはいう。

同じく重要な発見として、この新研究によってPa 30は硫黄とアルゴンが豊富で、水素とヘリウムを事実上含まないことがわかった。その事実は、アリゾナ州キットピーク国立天文台にある2.4mのヒルトナー望遠鏡に取りつけられた硫黄を感知する新しいフィルターを使うことによって明らかになった。そこでは露光時間2000秒でPa 30の写真が3枚撮影されている。


超新星のレムナントであるPa 30は、MDMにある2.4mのヒルトナー望遠鏡を使ってより詳しく撮影された(Getty Images)

Pa 30は過去10年間、いくつかの論文の主題になったが、その中心要素を明らかにしたことで、Pa 30が2つの白色矮星が衝突した結果である可能性が高くなった。

白色矮星とは、太陽がいずれそうなるものだ。微かな光を放つ著しく密度の高い恒星で、大きさは地球とあまり変わらないが、質量は太陽類似星並だ。白色矮星同士が衝突すると、超新星爆発が起こる場合があると考えられている。

「私たちの撮影した詳細な画像は、Pa 30の美しさを示すだけではありません。この画像で星雲の真の構造を見ることができるので、化学組成を調べ、中心星がすばらしい姿を生み出した方法を調べることで、一連の特性を白色矮星合体モデルによる予測と比較することができます」とフィーゼンは語る。「このレムナントによって天文学者は、これまで理論的モデルと遠方の銀河の例を調べることしかできなかった極めて興味深いタイプの超新星を研究できるようになるでしょう」

澄み切った空と大きな瞳に願いを込めて。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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