当事者の人たちは親子関係でどのようなことに悩み、どんな対処法があるのだろうか。親子関係に悩む人たちの相談を受ける、東京はなクリニック院長、興梠真紀さんに聞いた。
毒親とは? 特に多いパターンは
近年メディアでよく取り上げられるようになった「毒親」。医療コンサルタントで心理療法家、スーザン・フォワードの 著書『Toxic Parents, Overcoming Their Hurtful Legacy and Reclaiming Your Life. Bantam Books. (日本語訳:毒になる親 一生苦しむ子ども)』から1989年ごろ生まれた言葉だという。子どもを支配したり、傷つけたりして子どもにとって「毒」になる親のことだ。特に母親と子の関係は複雑に依存と支配が絡み合い、子どもが息苦しさや罪悪感などを感じることもある。ただ、興梠さんは「純粋に子どもと接する母だけの問題ではなく、表立って子どもとやり取りするのが母親であり、実際は家庭の中で父親が機能不全になっていたり、両親に問題がある場合も多々あります」と指摘する。
東京はなクリニックでは、毒親の傾向を5つのパターンに分類している。(詳細はこちら)
1. 虐待型:身体的・精神的・性的虐待をする親
2. コントロール型
3. 過干渉型
4. 自己愛が強すぎる親
5. 親の役割を果たさない親
1の虐待型は子どもの人生に深くトラウマを残すため、専門的な技法のカウンセリングなど、早期の治療が必要だ。
2~4のタイプは親に自信がないことから起こる。2は、自分の不安を抑えるように子を暴力でコントロールしたり、厳しく責め立て命令したりする。中でも3の過干渉型は一見子に投げかける言葉は優しく見えても、自分の不安をぶつけているのだ。4は、子どもが小さい時は自分のできなかったことや夢を押し付けるが、子が大人に近づき才能を開花させようとするとけなしたり、機会を奪ったりして自分が優位に立とうとする。
クリニックへの相談は、特に5の「親の役割を果たさない親」タイプの悩みが多いという。興梠さんは「子どもに寄りかかっている親のことです。夫婦仲が悪かったり、父親が忙しすぎて相談する相手がおらず、子どもが相談相手になっていたり。親子関係は一見良さそうですが、実は子どもの力を蝕んでいることも。家庭内トラウマをもつ『Adult Children』と言われる子どもたちにも当てはまります」と解説する。
明らかになった、30、40代男性の悩み
会社の人間関係や夫婦関係に悩む人たちの相談内容を紐解いていくと、悩みや問題の根底には「親との関係」が深く影響していることが多いという。心当たりのある人たちがより相談しやすいようにと、東京はなクリニックでは、2022年6月から「親との関係カウンセリング」の取り組みを開始。クリニック全体で月250件ほどの相談を受けているが、その多くが親子関係にも関わる悩みだ。興梠さんは「対人関係や自己肯定感の低さの裏側には、ご本人が思っている以上に親子関係が根っこにあります。この取り組みを始めて意外だったのは、男性からの相談が多かったことです」と明かす。以前は母との関係に悩む女性が多かったが、最近では30、40代の男性の相談件数も増えてきているという。