解雇されたグーグル従業員ら、その理由も知らされず

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Google(グーグル)のスンダー・ピチャイCEOは米シリコンバレーで最も尊敬されているテック系CEOの1人として広く認められている。そのピチャイが珍しくグーグル社員1万2000人の解雇の扱いをめぐり非難されている。

人員削減に関する全社員に向けたメモの中でピチャイは「ここに至った決断には私が全責任を負っており、過去2年間、我々は劇的な成長を遂げた。その成長に合わせて、また成長を促進するために、今日直面しているものとは異なる経済実態を想定して人材を採用した」と述べている。

Collaborative Robotics(コラボレーティブ・ロボティクス)のCEO兼創業者でAmazon(アマゾン)の元エンジニア、Scale AI(スケールエーアイ)の元最高技術責任者であるブラッド・ポーターは「従業員解雇を発表するこれらのCEOメモで行われている微妙な責任転嫁(Blame-shifting)のことを私はBSと呼ぶ。これらの多くは真実の記述だが、少し不誠実だ」とLinkedIn(リンクトイン)に投稿した。

ポーターによると、ピチャイの責任を取るという主張は「異なる経済実態」に責任を転嫁することで希薄化された。CEOの最も重要な仕事の1つは「シナリオプランニング」に取り組み、組織に悪影響を及ぼす可能性のある予期せぬ出来事に備えるために時間、エネルギー、労力を費やすことだ。インフレが進み、バブルが崩壊したかのような状況でもグーグルは採用を続けた。

共感できるコミュニケーションの欠如

Meta(メタ)のマーク・ザッカーバーグCEOも同様に、従業員1万1000人の解雇について「オンライン商取引が以前のトレンドに戻っただけでなく、マクロ経済の悪化、競争の激化、広告のシグナルロスにより収益は私が予想していたよりもはるかに少なくなる。これは私の失敗で、その責任を取る」と述べた。

ピチャイやザッカーバーグのようなCEOは経済状況の分析を間違えたと認めているのに、なぜ職とかなりの報酬を維持しているのだろうか。もし彼らが本当に自分たちに責任があると思っているなら、なぜApple(アップル)のティム・クックCEOのように自らの意思で減給を受け入れなかったのだろうか。会社の経営判断をするのは自分たちではないのに、なぜ普通の従業員が失業という影響をもろに受けることになるのだろう。もしCEOや経営幹部のボーナスが従業員の満足度や定着率、組織の長期的な収益性と結びついていれば、リーダーシップのあり方も変わってくるだろう。

アルファベット労働組合は、今回の解雇を「前四半期だけで170億ドル(約2兆2170億円)もの利益を上げた企業としては容認できない行為」と断じた。



CEOや経営幹部の報酬の大部分は株式交付やオプションだ。最近のように株価が下がると、上級管理職は自社株でペーパーロスを被る(株を売ったときだけ損をする)。人員が削減されると、株主や投資家は会社が財政的責任を果たしているととらえて拍手を送る。そうして解雇が発表されると株価は上昇し、幹部は利益を得る。
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翻訳=溝口慈子

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