また、男性の場合は面倒な人間関係に巻き込まれたくなく、全てをシャットダウンし、自分ひとりの世界に閉じこもり、適切な人間関係が気付けなくなるケースも多い。「シャットダウンすることである意味、安定しますが、不全感を抱えてしまう。お金や仕事があっても幸せではない、何のために生きているか分からない。問題の全てを自分の責任として捉えている方も多くいらっしゃいます」と語る。さらに親など「受け入れてもらった経験」が欠落していることから自己肯定感が低く、無力感を感じる人もいる。
親子関係の「境界」を引く
カウンセリングはどのように進めていくのだろうか。「人は生まれてから親との関係の中で、基本的なセルフイメージ形成し、良くも悪くもそれを確かめながら生きていくことになります。親御さんの問題とご自身の人生を切り分けて、どんな環境で育ち、どんなライフイベントがあったか、ご自分の理解を進めていきます。親に求められ続けて形成された完璧主義や不自由な思い込みに気づくことが大切です」と興梠さんは語る。
この段階で親のことを見捨てた気分になり罪悪感を持つ人も多いが、「自分の人生に責任をもつ必要はありますが、親御さんの人生の責任まで取る必要はありません。全ての要求や願望を引き受けなくてもいいですよ」と呼びかける。これは心理学用語でバウンダリー(心の境界線)といい、自分と他人との適切な境界を引くことで対人関係を円滑にするものだ。
「密着していた親子関係が別々の存在だと理解し、境界を再設定していただきます。小さい頃から親からシャワーのようにさまざまな言葉を浴びせられ、無自覚にもその価値観は自分の奥深くまで入り込んでいるものです。自分で自分を縛っている原因を知り、自身を苦しめているアイディアを検証していただき、その仕組みが分かるとそこから抜け出せる人も多いものですよ」
気づきのタネは意外なところにあるかもしれない。自身が抱える問題を過小評価し、目をそらし続けている場合もある。とりわけ、知識層やビジネスリーダーがその傾向にあるという。
「仕事で大きな問題に取り組む人こそ、私的な問題を持ち込んではいけないと自分を押し殺してしまいがち。また若くして起業家や著名人になられた方にはネガティブな点が必ずあり、それを上回るパワーでポジティブさに変えてきたのでしょう」と興梠さん。「しかし、テコになりきれず、ネガティブさが人生の奥深くに根付いてしまっている人も。ぜひ気持ちの引っ掛かりを大切に、自分自身を見つめ直す機会としてカウンセリングを利用していただいても良いと思います」